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KATZDENブログ
2025.05.22 コラム

階段の角度の基準はどれぐらい?安全度を高めるポイントも解説!

この記事の監修

二級建築士 一級建築施工管理技士/課長 紀熊
二級建築士 一級建築施工管理技士/課長紀熊

階段の角度はどの程度を基準に考えれば良いのか分からない、という方も多いのではないでしょうか。結論、階段の角度は建築基準法で示されている基準よりも小さくするのが基本です。

本記事では階段の角度の考え方について解説します。また、角度以外にも、安心して昇り降りできる階段にするポイントをまとめました。

本記事を読むことで、新居の階段を安全性の高いものにすることができます。階段の角度などについて検討中の方は、ぜひお読みください。

階段の角度やスペースに関する用語


写真:カツデン/オリガミ片持ち階段「WAVES DANDEL」

階段の角度やスペースについて検討する前に覚えておきたい用語が3つあります。

  • 蹴上(けあげ)
  • 踏面(ふみづら)
  • 踊り場(おどりば)

これら3つの意味について詳しく解説していきます。

蹴上(けあげ)

蹴上とは、階段の1段の高さを指します。階段は蹴上の高さを一定にした方が安全性は上がります。

蹴上を低くするほど段数は増えますが、昇りやすくなります。足を高く持ち上げる必要がないためです。逆に蹴上を高くすると段数は減らせますが、昇りにくくなります。

特に高齢者がいる住宅の場合、蹴上は低くした方が良いです。高齢者は足腰が弱くなっており、片足を高く持ち上げるとバランスを崩す恐れがあるためです。また、体力が衰えている場合、蹴上が高いと昇るのに疲れてしまいます。

踏面(ふみづら)

踏面とは段板(足を乗せる板のこと)の奥行の長さを指します。

踏面はできるだけ長くした方が、角度が緩やかになって昇りやすくなります。また、踏み外しも防ぎやすくなります。

ただし、長くしすぎると階段に使うスペースが大きくなってしまいます。

踊り場(おどりば)

踊り場とは、階段の途中に設けられる少し広めの場所を指します。踊り場は大きな1枚の板になっています。途中で折れ曲がる階段の場合、方向転換する箇所を踊り場にすることも多いです。

建築基準法では「高さ4m以内ごとに踊り場を設けないといけない」と定められています。途中で折れ曲がることのない直線階段でも、4m以上なら踊り場が必要です。

踊り場があれば、踏み外した際も下まで落ちることなく、大怪我を防げる場合があります。体力が衰えた高齢者が休憩できる、階段照明の掃除がしやすいなどのメリットもあります。

また、スペースに余裕があるなら、踊り場を更に広くして中2階のように使うことも可能です。作業スペースや書斎として活用できます。

階段の角度の基準はどれくらい?


写真:カツデン/片持ち階段「DANDEL」

建築基準法の23条には階段の寸法基準について記載されています。一般住宅の階段の場合、次の3つの基準を満たさないといけません。基準を満たさないで建築すると違法になってしまいます。

  • 段板の幅:75cm以上
  • 蹴上:23cm以下
  • 踏面:15cm以上

ただし、建築基準法はあくまで、建築物の構造や設備などに関する最低ラインを定めた法律であり、この基準に基づけば安全である、というものではありません。むしろ蹴上:23cm、踏面:15cmの階段は、角度が約57度と急になってしまいかなり昇りにくいです。

小学校の階段の場合、蹴上:16cm以下、踏面:26cm以上という基準が設けられています。この基準に基づいて設計すると、角度は約32度になります。小学校の階段の基準と比べると、57度がどれほど急かイメージしやすいかと思います。

参考:建築基準法の階段に係る基準について

階段の角度は安全度とスペースを考慮して決める

階段メーカーであるカツデンでは、次の基準で設計する場合が多いです。

  • 蹴上:20cm〜21cm
  • 踏面:22cm〜25cm

この基準で設計した場合は、階段の角度は約39度〜42度になります。このぐらいの角度なら、そこまで足を高く持ち上げなくて良くなり、安全度が高まります。

もっと緩やかな階段にすることも可能ですが、あまり角度を小さくしすぎると、スペースを多く取ってしまいます。また、段数も増えてしまうので、設置費用も上がってしまいます。

そのため、このあたりの基準で設計するのが現実的です。

参考:よくある質問(昇降しやすい階段の踏み面と蹴上はどのぐらいですか?)

階段の角度の出し方(計算方法)

階段の角度は蹴上と踏面が分かれば次の計算式で求めることが可能です。

tan-1(蹴上/踏面)×180/π

以下のサイトを使えば、簡単に角度を求められます。水平距離(踏面)と垂直距離(蹴上)を入力すれば、自動的に勾配(角度)を計算してくれます。

参考:勾配計算

安心して昇り降りできる階段にするポイント


写真:カツデン/シースルー階段「FRIS」

階段の安全性を高めるには、角度以外にも意識すべきことがあります。安心して昇り降りできる階段にするポイントは次の4つです。

  • 段板を滑りにくくする
  • 手すりを設置する
  • かね折れ階段や廻り階段を選択する
  • ほど良い明るさの照明を付ける

1つ1つのポイントについて詳しく解説していきます。

段板を滑りにくくする

まず大切なのが段板を滑りにくくすることです。階段の角度が緩やかでも、滑りやすいと転倒してしまう可能性はあるので、滑りにくい塗装を選ぶことが大切です。

滑りにくさの指標となるものに滑り抵抗係数(CSR)があります。カツデンの階段の場合、滑り抵抗係数が0.38前後になるように塗装されています。この数値が低いと滑りやすくなってしまいます。反対に高すぎると、つまずきやすくなってしまいます。

手すりを設置する

階段には必ず手すりを設置する必要があります。建築基準法では「階段の壁がない側には必ず手すりが必要」「少なくとも階段の片側には手すりが必要」と記載されています。この基準を満たさないと法律違反になってしまい、現行の安全基準を満たせなくなります。

また、更に安全性を高めたい場合は、両側に手すりを設置するのもおすすめです。両側に設置すれば、昇るときも降りるときも利き手で手すりを使えます。ただし、幅の狭い階段の場合、両側に手すりがあると狭くなってしまうので、そこも踏まえて検討しましょう。

かね折れ階段や廻り階段を選択する

階段の安全度を高めたいなら、まっすぐ昇降する直線階段よりもかね折れ階段や廻り階段をおすすめします。かね折れ階段は途中で90度曲がる階段で、廻り階段は途中で90度に2回曲がる階段を指します。

途中で曲がる階段の場合、万が一転倒しても下まで落下せず、曲がる部分で止まることができるため、大怪我を防げる可能性があります。また、廻り階段の場合Uターンする分段数が増えるため、角度が緩やかになって昇りやすくなります。

ただ、直線階段にも、設置費用を抑えやすい、荷物を持ったまま昇り降りしやすいなどのメリットはあるので、それらも考慮して階段の形状を選択しましょう。

ほど良い明るさの照明を付ける

安全度をより高めたいなら、階段の照明にもこだわることが大切です。階段の照明にはブラケットライトやダウンライトなど様々な種類がありますが、大事なのは足元をしっかり照らせることです。足元が暗いと、踏み外すリスクが高くなります。

足元が暗い場合は、フットライトを併用するのもおすすめです。特にセンサー付きのフットライトなら、階段を通るときだけ足元を照らしてくれて便利です。

また、照明は眩しすぎないこともポイントです。眩しすぎると部屋の明るさと違いすぎて、立ち眩みの原因になります。

階段の設置場所はどこにすると利便性が良い?


写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」

続いて、階段の設置場所について解説します。階段の設置場所をどこにするかで、利便性が大きく変わります。設置場所は大きく次の2つに分かれます。

  • 玄関ホール
  • リビング

各設置場所のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。

玄関ホール

特に昔の住宅は玄関ホールに階段があるパターンが多いです。玄関ホールに階段があると、帰宅後すぐに2階に向かえるので、導線がスムーズであると言えます。

デメリットは家族のコミュニケーションが減ってしまいやすいことです。特に子どもは思春期になると、リビングに顔を出さずすぐ自室に向かってしまいやすくなります。

リビング

最近人気が高まっているのが、リビング階段の間取りです。リビングに階段があると、家族のコミュニケーションが増えやすくなります。玄関ホールにある場合と違って、自室に向かうには必ずリビングを経由しないといけないためです。

デメリットは喧嘩中などでも家族とリビングで顔を合わせないといけなくなることです。また、リビング階段にする場合、来客対応をどうするか考えておく必要があります。リビングにお客さんを招く場合、家族がリビングを通って1階に降りにくくなる場合があります。

対処法としては、来客スペースを別途設ける、2階にもトイレや洗面所を設けるなどがあります。

階段は安全性だけでなくデザイン性にもこだわりたい


写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」

階段は安全性はもちろんですが、できればデザイン性にもこだわりたいです。

階段のデザイン性を高めるポイントは次の3つです。

  • シースルー階段を検討する
  • 階段の色にこだわる
  • 階段のデザインにこだわる

1つ1つのポイントについて詳しく解説していきます。

シースルー階段を検討する

デザイン性を高めたいなら、シースルー階段にするのもおすすめです。シースルー階段は蹴込み板がなく、階段下をあえてデッドスペースにしてあるのが特徴です。無駄なパーツがなくておしゃれに見えるのと、開放感があるのがメリットです。

ただし、普通の階段と違って階段下を収納にはできません。自宅の収納スペースが十分か考えたうえで、シースルー階段に決めることをおすすめします。

階段の色にこだわる

デザイン性を高めたいなら階段の色は大事です。色によって受ける印象が大きく変わります。明るくて元気な色にするか、暗くて落ち着いた色にするかは、家族の好みや住宅の壁紙や床材との相性によって決める必要があります。また、同じ黒でも、たとえば艶消しブラックにすると、重厚感が増すなど印象が変わります。

加えて、膨張色と収縮色があることも覚えておきましょう。白に近い色は膨張色と呼ばれ、空間を広く見せる効果があります。反対に黒に近い色は収縮色と呼ばれ、空間を引き締める効果があります。

階段の素材にこだわる

階段の素材によっても、受ける印象が大きく変わります。室内階段の素材として多く使われているのは、木とスチールです。

木はもっとも多く使われる素材で、ナチュラルな雰囲気や暖かみがあるのが魅力です。階段の段板と床材を同じ樹種、色合いにすることで、階段と住宅で統一感を出すこともできます。

一方でスチールは、引き締まった雰囲気が魅力です。また、耐久力があるため階段の骨組みを細くすることもできます。値段は木の3〜5倍ほどですが、木にはない良さがあります。

まとめ

本記事では階段の角度について解説しました。階段の角度はどの程度にすれば良いのかや、安全性を高めるためのポイントなどがお分かりいただけたかと思います。

建築基準法の基準ギリギリで設計すると、階段の角度は約57度になりかなり昇りにくいです。安全性を高めるには、もっと角度を小さくする必要があります。

階段の角度は約39度〜42度程度にすることが多いです。特に高齢者が住む場合は、なるべく緩やかな階段にすることをおすすめします。ただし、スペース的に緩くするのが難しい場合もあり、そのあたりも踏まえて設計する必要があります。

階段の安全性を高めるには段板を滑りにくくしたり、手すりを設置したりすることも大切です。また、階段は安全性だけでなく、利便性・デザイン性にも気を配りたいところです。このあたりのバランスを考えて設計することで、生活満足度を高めることができます。

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