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KATZDENブログ
2021.04.26 コラム

強化ガラスは割れても安全! ガラスの性能のお話

こんにちは。
品質管理部の坂田光穂です。
さて今回は、住宅に関わらずさまざまな場所で触れる機会の多い「ガラス」について書いていきたいと思います。

強化ガラスって割れるの?

まずは、カツデンアーキテックも手すりの面材等で採用している強化ガラスの性能や特徴の話をします。
シースルー階段ObjeA ガラス縦枠手すり"

「強化ガラス」という名称ですが、
「強化ガラスは強化されてるから割れない」
わけではないということをご留意ください。

確かに、強化ガラスはフロートガラス(通常のガラス)に比べて3〜4倍程度の強度を持っています。
通常よりも割れにくいものの、特定の条件では割れてしまいます。
では、どんな条件で割れるのでしょうか?

強化ガラスが割れる条件

ガラスの種類を問わず、ガラスは変形に弱く、力がかかって「たわむ」ときに破壊します。
強化ガラスといえど、フロートガラスよりたわみにくい(剛性が高い)という訳ではなく、たわみに耐えられる幅が大きいという表現が正しいでしょうか。
当然ですが、たわみが限界を迎え、難しい言い方をすると、圧縮応力と引張応力のバランスが崩れると割れてしまいます。

また、まれに急激な温度変化によっても割れる可能性があります。
これは「熱割れ」と呼ばれる現象なのですが、陽が当たったりして温度が高くなったガラス面が膨張し、サッシ等に飲み込まれて低温のまま変化しない部分との差で、「たわみ」と同様に圧縮応力と引張応力のバランスが崩れて割れるというものです。
ただし、この現象は温度差が50〜60℃あると割れるとされており、通常は起こりにくいのですが、ガラスの切断面が良好でない場合は、低い温度差でも起こる可能性があります。

「強化ガラスって、思ったほど安全じゃない・・・?」

と思った方々へ。
ここからが強化ガラスの最大の特徴である、割れたときの安全性についてのお話です。
皆さんの中に、ワイングラスなどを洗っているときに「パキッ」とやってしまい、鋭利な破片を片付けるのに苦労した経験を持つ方もいるのではないでしょうか。

強化ガラスは、このような通常のガラスのように一部分だけが割れることはなく、応力バランスが崩れたときに1枚のガラス全体が小さい粒状に砕けます。
ひとつひとつの破片が比較的鋭利にならずに細かく割れるため、例えば上から降ってきたとしても大きな危険にはなりにくいのです。
「割れても安全である」ため、割れる危険性が高い窓やドアで使用されることが多いのです。
強化ガラスの破片

割れにくいガラス「合わせガラス」

2019年の台風第19号では東日本にて、2020年の台風第10号では九州にて甚大な被害を出しました。
その対策として、「窓ガラスに養生テープや飛散防止フィルムを貼ることが効果的だ」とニュースなどで取り上げられ、影響を受ける地域では実際に行った方もいたのではないでしょうか。
その方法ではガラスが割れること自体を防止することは叶いませんが、飛散して二次被害が起きる可能性を下げることにはつながります。

「でも車のフロントガラスは、石が当たっても割れないから、全部それにしちゃえば良いんじゃないの?」
と思った方もいらっしゃると思います。
フロントガラスで使われるのは合わせガラスと呼ばれる、2枚のガラスの間に樹脂膜(フィルム)を挟んで熱で圧着したものです。
そのフィルムを厚くすることで耐貫通性を上昇させることも可能で、防災・防犯・防音などを目的として使用されることもあります。
突風で飛来するものから防御するためには、合わせガラスがもっとも有効とされています。

それを証明したものが下記の試験結果です。
6種類のガラスで衝撃性能試験を行い、加撃体(ここでは木材)が貫通しなかった場合を<合格>と定めると、以下の結果では合わせガラスのみが合格となっています。

ガラスの種類別 加撃試験
参照:AGC株式会社「台風等の強風時飛来物などの衝突に関する衝撃試験」

割れ方は通常のガラスと同じですが、フィルムと接着しているため、飛散・脱落しにくいことが合わせガラスの特徴です。
その機能性の高さだけで見れば合わせガラスが魅力的に映りますが、もちろんデメリットもあります。

まずは価格が高いこと。
ガラスメーカーによって異なりますが、強化ガラスと比べた場合、合わせガラスの方が1.5〜2倍程度高くなります。
間に入れるフィルムを厚くすると、さらに価格はUPします。

次に小口が美しくないこと。
ガラスにフィルムを挟んで二重にするので、以下の画像のような意匠になってしまいます。
合わせガラス 小口
参照:建材ダイジェスト

性能としては合わせガラスの方が望ましいものの、上記2点がネックとなり、「強化ガラスで十分じゃないか?」となっているのが、一般的な住宅の状況です。

カツデンアーキテックでのガラスとの関わり

冒頭で軽く触れましたが、
「カツデンアーキテックの製品でガラスのものってあるの?階段屋じゃないの?」
と思った方のために説明しますと、当社では主に「手すりの面材」にガラスを使用しています。(その他、段板や蹴込み板などがありますが、受注数・出荷数が少ないためここでは割愛します)

その手すりで使用されるガラスには、シースルー階段『ObjeA』吹抜け手すり階段手すり屋外らせん階段『KD Spiral』等の製品リリースを行った2003〜2004年当時から「飛散防止フィルム」というものが貼られていました。
「飛散防止フィルム」とは、一般的に窓ガラスなどで使用されることが多く、ガラスが割れた際に破片がフィルムにくっ付くことで、散らばりづらくするためのものです。
これの何が良いかというと、散らばった破片を踏んだり触れたりして二次的なケガを防止する役目があることです。

フィルムをガラスに貼ることを制定した当時は、室内手すりの面材としてのガラスにフィルムを貼るべきか否かについて答えを持っている人間は社内外問わずいませんでした。
そのため、当時の大口取引先の仕様に合わせて、「ガラスには飛散防止フィルムを貼ること」を当社の仕様にも加えました。

しかし、階段・手すり製品の売上が増加していくにつれ、ガラスを使用した製品の数も増えており、2013年と2019年の出荷量を比較すると約3倍にまで伸びていました。

ガラス面材の製品売上推移

これほどの量を出荷していると、年間で何件か飛散防止フィルム起因の不具合が寄せられるようになりました。

・フィルムに気泡が入っている
ガラスと飛散防止フィルムの間に気泡

・フィルムに傷が付いている
飛散防止フィルムに傷

中でも多い不具合が上記2つです。
ガラスの製作とフィルムを貼る工程は外注業者に依頼しているのですが、その過程でも発生し得ることですし、もちろん当社にてガラスを組み付ける際、配送している際、施工する際にも発生する可能性があります。

ガラスの仕入れ業者に聞いたところ、フィルムを貼る工程でホコリなどが入って気泡ができてしまう確率は50%、その中から検査時に見つけて貼り直すものは20%、残りの30%は見逃してしまうor基準をクリアしているとみなして出荷してしまうということでした。
フィルムに異物が入ってしまった場合、その場で気泡ができるわけではなく、数日〜数週間が経過してから膨らんでくることもあり、フィルム貼付から出荷工程までの期間に目視で見つけ出すことは難しいようです。

当社で扱うガラスの数十〜百枚のうち1枚は、そのどこかしらの工程が起因でこういった問題が起きてしまうことに頭を悩ませていました。

飛散防止フィルムを貼れば安全?

また、それと同時期に、万が一ガラスが割れたときにフィルムに貼り付いたガラスが上階からまとまった状態で落ちてくることが果たして安全なのか?という議論が生まれました。

ガラスの大きさは各物件によってさまざまですが、平均の重さで1枚:20kg程度。
20kgのガラスが約3mの高さから落下するとどうなるかを検証してみました。

フィルムありの場合

フィルムなしの場合

フィルムありの方は、20kgの物体がまとまって落下し、頭蓋骨はもちろん、首、下顎骨、背骨へ衝撃が伝わり、最悪は命を落とす大事故につながってしまいます。
参考:建材落下の頭部への打撃シミュレーション

一方でフィルムなしの方は、ひとつひとつの重さが数gの破片がバラけて落下し、切り傷を引き起こすことはあるものの、衝撃によって命を落と確率は当然低くなります。

以上の理由から、カツデンアーキテックではガラスに飛散防止フィルムを貼らないことを推奨し、ほとんどの住宅メーカーで受注したガラス部材に関しては、納得してもらった上でフィルムなしへと変更しています。
当然、フィルムがなくなる分のコストダウンもできているため、安全面とコスト面で住宅メーカーと施主の双方にメリットがあります。

まとめ

当社は金属加工業として運営して60年が経過しましたが、ガラスに対するノウハウは20年程度。
顧客や外注先の力によるものが大きいです。
面材として以外にも使い方はないのか、どういったガラスが今の住宅に最適なのか等々、これからもさまざまなニーズに応えると同時に安全性にも配慮して参ります。

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