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KATZDENブログ
2025.05.22 コラム

昇り降りしやすい階段の寸法は?安全性を高める方法を解説!

この記事の監修

二級建築士 一級建築施工管理技士/課長 紀熊
二級建築士 一級建築施工管理技士/課長紀熊

階段は住宅の中で事故が起こりやすい場所のひとつです。「健康長寿ネット」によると、住宅内の事故のうち65歳以上の事故が多く発生した場所は、居室が45.0%で最も多く、次いで階段が18.7%となっています。

参考:高齢者の住宅内の事故 | 健康長寿ネット

安全性の高い階段を設計するには、階段の寸法(垂直距離と水平距離)を検討し、ちょうど良い角度にすることが大切です。

本記事では昇り降りしやすい階段の寸法について解説します。また、階段の安全性を高めるためのポイントについてもまとめました。

本記事を読むことで、安全性が高い階段を設計し、安心して暮らせる住宅にできます。階段の寸法はどうすれば良いか分からないという方は、ぜひ参考にしてください。

階段の寸法を考えるうえで知っておきたい各部位や長さの名称


写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」

階段の寸法について考える前に、階段の各部位や長さの名称を知っておきましょう。本記事では次の5つの意味について解説します。

  • 蹴上(けあげ)
  • 踏面(ふみづら)
  • 段板(だんいた)
  • 段鼻(だんばな)
  • 蹴込み板(けこみいた)

これらの意味を知れば、階段メーカーのカタログなどに記載される寸法目安もスムーズに理解できます。

蹴上(けあげ)

蹴上とは階段の1段の高さ(垂直距離)のことです。

蹴上をどの程度の高さにするかは、階段の昇りやすさに大きく関わってきます。蹴上が高すぎると、足を高く持ち上げないといけなくなり、足腰の筋力が衰えている方だと疲れてしまいます。また、高く持ち上げることで、バランスを崩して転倒する恐れもあります。

踏面(ふみづら)

踏面とは階段の1段の奥行(水平距離)のことです。踏面も蹴上同様に、階段の安全性に大きく関わってきます。蹴上を長くすれば足を置くスペースが増えるので、踏み外しを防ぎやすくなります。また、長くした分、階段の勾配も緩やかになります。

階段の蹴上は短くするほど、踏面は長くするほど緩やかな階段になるので、覚えておきましょう。

段板(だんいた)

段板とは階段の足を乗せる板を指します。

段板の奥行(踏面)と幅によって、階段の使いやすさが変わります。先程解説した通り、奥行が長いほど緩やかな階段になります。

階段の幅は広くした方が、家族が階段ですれ違うときの安全性が高くなります。また、荷物を持ちながらでも昇り降りしやすくなります。

また、段板を滑りにくい素材にしたり滑り止めを付けたりすることでも、安全性が高まります。若い方でも急いで階段を昇ると滑って転倒することがあるので、対策を立てるに越したことはありません。

段板は基本的には長方形ですが、階段の曲がる部分には30度、または45度に分割した三角形の段板が設置されます。あるいは、1枚の大きい板(踊り場)が設置されます。踊り場にした方が、万が一踏み外した場合も1番下まで落下せず、大怪我を防げる可能性があります。

段鼻(だんばな)

段鼻とは段板の手前先端部分を指します。段鼻には「ノンスリップ」と呼ばれる溝が掘られている場合が多いです。また、階段から少し出っ張るように設計されている場合が多いです。少し出っ張っていることで、つま先が蹴込み板にぶつかるのを防げます。

蹴込み板(けこみいた)

蹴込み板は、階段の中でも地面に対して垂直の箇所を指します。蹴込みにある板のことは蹴込み板と呼ばれ、段板と段板を繋いでいます。

蹴込み板は、階段の揺れを防止するために用いられることが多いです。また、蹴込み板があることで階段下が見えなくなり、恐怖感を和らげることができます。

ただ、蹴込み板があると開放感が損なわれてしまうデメリットもあります。そのため、蹴込み板をなくした階段も存在し、シースルー階段、スケルトン階段、ストリップ階段、オープン階段などと呼ばれています。なお、蹴込み板がある階段は箱階段と呼ばれます。

シースルー階段は開放感の高さから、特にリビングに設置する階段として人気が高いです。

一般住宅における階段の寸法基準


写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」

建築基準法とは、建築物の構造や設備などに関する「最低ライン」を定めた法律であり、階段を設計する際もこの法律に則らないといけません。階段の寸法基準に関しては、建築基準法の23条で定められています。

結論から言うと一般住宅の場合、次の基準に基づいて階段を設計する必要があります。

  • 段板の幅:75cm以上
  • 蹴上:23cm以下
  • 踏面:15cm以上

23条に記載されている表の「(一)から(三)までに掲げる階段以外のもの」欄には、「蹴上22cm以下、踏面21以上」と書かれていますが、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く)は例外として、基準が緩和されています。

参考:建築基準法の階段に係る基準について

参考:建築基準法施行令 第二十三条 |e-Gov 法令検索

建築基準法で定められた寸法はあくまで最低ライン

建築基準法で定められた寸法はあくまで最低ラインであり、蹴上23cm、踏面15cmの階段を本当に作ってしまうと、かなり昇りにくくなってしまいます。

蹴上23cm、踏面15cmだとだいたい階段の勾配(傾き度合い)は57度になります。勾配は蹴上と踏面の長さが定まれば、以下の計算式で求めることが可能です。

tan-1(蹴上/踏面)×180/π

計算が少し複雑なので、以下のサイトなどで求めると良いです。

参考:勾配計算

勾配が57度の階段はかなり急であり、足を高く持ち上げて昇らないといけません。バランスを崩して転倒する可能性も高くなってしまいます。

ちなみに、小学校の階段の場合は蹴上を16cm以下、踏面を26cm以上にすると、建築基準法で決められています。これだと勾配は32度程度になります。勾配が57度の階段がいかに昇りにくいかイメージできるかと思います。

昇り降りしやすい階段の寸法

建築基準法で定められた寸法はあくまで最低ラインです。実際は蹴上はもっと短く、踏面はもっと長く設計することがほとんどです。では、どの程度の長さにすれば良いのかというと、カツデンでは次の寸法にすることを推奨することが多いです。

  • 蹴上:20cm
  • 踏面:25cm

この場合、階段の勾配は39度程度になり、だいぶ昇りやすくなります。ですが、スペース的に現実的なのは、蹴上:21cm、踏面:23cm程度になる場合が多いです。その場合の角度は42度程度です。

もちろん蹴上を短くすれば、段数は増えてしまいます。段数が増えれば設置費用も上がります。しかし、安全性を高めるにも、この基準に則って設計することをおすすめします。

なお、段板の幅に関してはカツデンの場合は、最大90cmまで伸ばすことが可能です。

参考:よくある質問(昇降しやすい階段の踏面と蹴上はどのぐらいですか?)

高齢者でも使いやすい階段の寸法は?

高齢者は足腰の筋力が衰えており、緩やかな階段でないと昇り降りが大変です。

国土交通省が公表している資料に「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」があります。これは、高齢者が安全に暮らせる住宅設計の基本方針をまとめたものです。高齢者の方でも使いやすい階段にするなら、この方針に基づいて設計するのが基本となります。

「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」には様々な基準が書かれています。階段の蹴上や踏面については次の基準を満たす必要があります。(ホームエレベーターが設けられている場合を除く)

  • (1)蹴上/踏面は22cm/21cm以下にする
  • (2)「蹴上×2+踏面」を55cm以上65cm以下にする
  • (3)踏面は19.5cm以上にする

参考:高齢者が居住する住宅の設計に係る指針

3つの基準を満たすことで、緩やかで使いやすい階段になります。

カツデンが推奨する蹴上20cm、踏面25cmだと、この基準を満たせるか確かめてみましょう。蹴上よりも踏面の方が5cm長いので(1)は満たしています。「蹴上×2+踏面」は65cmなので(2)も問題ありません。(3)も当然満たしています。

カツデンの基準で推奨する寸法は、高齢者にとっても安全性が高いということです。

階段の安全性を高めるポイント


写真:カツデン/階段手すり

階段の安全性を高めるポイントについて解説します。ポイントは次の4つです。

  • 階段の形状を検討する
  • 手すりを設置する
  • 段板を滑りにくくする
  • 照明の明るさを調整する

勾配を緩やかにすることに加え、これらの安全対策を行えばより事故を防ぎやすくなります。安全対策は念入りに行うにこしたことはありません。

1つ1つのポイントについて詳しく解説していきます。

階段の形状を検討する

階段にはいくつかの形状があります。

  • 直階段:途中で曲がることのないまっすぐな階段
  • かね折れ階段:途中でL字に1度曲がる階段
  • 回り階段:途中でL字に2度曲がる階段
  • らせん階段:くるくると回りながら昇る階段

階段の形状によって安全性も異なります。

直階段は踏み外すと1番下まで落下する場合があり、安全性は低めです。かね折れ階段や回り階段は落下しても曲がる部分で留まれるので、安全性は高くなります。また、らせん階段は円の中心部分の幅が狭くなるので、踏み外さないように気をつけないといけません。

安全性を高めるなら、かね折れ階段・回り階段がおすすめです。

特に回り階段はUターンして昇る分、段数が増えて緩やかな階段になります。ただし、設置費用はその分上がってしまいます。設置費用が1番安いのは形状がシンプルな直階段です。

また、形状によってデザイン性も変わります。らせん階段は安全性こそ下がりますが、その美しさから人気もあります。安全性・費用・デザイン性の3つを考慮して選択しましょう。

手すりを設置する

安全性を高めるなら手すりの設置も必要です。建築基準法で現在は手すりの設置が義務付けられています。

  • 階段の少なくとも片方には手すりが必要
  • 階段の壁がない側には必ず手すりが必要

階段の高さが1m以上の場合に限りますが、この2つを守らないと、建築基準法違反になってしまいます。ただし、手すり設置が義務付けられたのは平成12年からで、それ以前に建設された住宅には手すりがない場合もあります。

手すりがないと現行の安全基準を満たせていないので、リフォームで設置することをおすすめします。

また、階段の手すりはできれば両側に付けることをおすすめします。両側にあった方が、踏み外した際に咄嗟に掴まりやすくなります。両側に付けるのが難しい場合は、手すりが1番必要な方の利き手側(降りるときの)に付けましょう。

段板を滑りにくくする

安全性を高めるには段板を滑りにくくすることも大切です。多くの階段の段鼻にはノンスリップ加工がされていますが、それだけだと滑り止めとして弱いです。また、階段が古くなると塗料が剥がれて滑りやすくなってしまいます。

手軽な対策としては、滑り止めテープを貼る方法があります。しかし、テープも途中で剥がれてしまう場合があります。剥がれると、そこでつまずいてしまう恐れがあります。

しっかり対策するなら、段板に滑り止めワックスなどを定期的に塗ることがおすすめです。

照明の明るさを調整する

階段の照明の明るさにも気を配ることが大切です。特に大事なのが、足元が見えやすいかどうかです。足元が見えにくいと、踏み外す危険が高まります。

照明の位置を調整し足元まで照らせるようにしましょう。どうしても足元が暗くなるなら、フットライトを併用することをおすすめします。

また、照明は明るすぎるのも良くないので注意が必要です。階段と他の部屋の明るさが違いすぎると、眩しくて立ち眩みの原因になります。

まとめ

本記事では階段の寸法について解説しました。階段の蹴上や踏面などの長さはどのようにして決めれば良いのか、お分かりいただけたかと思います。

建築基準法で定められた寸法は、あくまで最低ラインです。蹴上23cm、踏面15cmの階段はかなり急になり、安全性が低くなってしまうので注意が必要です。

カツデンでは蹴上20cm、踏面25cm程度にすることを推奨しています。これなら国土交通省が定める、高齢者が安全に暮らせる階段の寸法基準も満たしています。

また、階段に手すりを設置したり、段板を滑りにくい素材にしたりすることも、重要な安全対策です。安全対策をしっかり行うことで、高齢者の方も安心して暮らせます。

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