階段を設置・リフォームする際は安全面を重視することが大切です。特に家族に高齢者や子どもがいる場合、家屋内の事故を防げるようにしたいものです。
本記事では階段の安全対策について解説します。安全対策が必要な理由や具体的な対策内容、安全対策を行う際に活用できる支援制度、についてまとめました。
本記事を読むことで、階段を設置・リフォームする際に気をつけるべき点が分かります。階段の設置・リフォームを検討している方はぜひ参考にしてください。
階段の安全対策が必要な理由
写真:カツデン/階段手すり
階段の安全対策が必要な理由は、次の2つに分けられます。
- 高齢者の安全を確保するため
- 子どもの安全を確保するため
高齢者のための安全対策と、子どものための安全対策は少し違います。安全対策を行う前に目的をはっきりさせることが大切です。目的をはっきりさせることで、どのような点を重視して階段を設置・リフォームすべきかがみえてきます。
高齢者の安全を確保するため
高齢者の事故の中では、階段からの転落が多いと言われています。
高齢者は運動機能および視聴覚機能が低下しています。足を上げているつもりでも、実際はあまり上がっていないということもあり、階段でつまずきやすいです。階段から転落してしまうと、骨折などの大怪我を負ってしまう可能性もあるので、安全対策は必須です。
古い住宅の階段は老朽化が進んでいるうえに、過去の時代の安全基準に基づいて設計されているため、安全性に欠ける場合が多いです。そのため、高齢者が住んでいる場合、リフォームした方が良い可能性があります。
また、これから新居を建てる場合も、自分達が高齢者になったときを想定して階段の安全対策を行っておくことが大切です。
子どもの安全を確保するため
小さい子どもがいる場合、階段で遊んでしまうことを見越して安全対策を行う必要があります。子どもからすると、階段は遊具に見えてしまいます。目を離した隙に子どもが階段で遊んでしまい、ハラハラしてしまうことがあるかもしれません。
1歳前後になると、ハイハイから歩き始める段階になるため、階段に昇れてしまうようになります。子どもが歩き始める前に対策を行っておくようにしましょう。
階段の安全対策の基本
写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」
階段の安全対策の中でも代表的なのは次の4つです。
- 手すりを設置する
- 勾配をなるべく緩くする
- 階段を滑りにくくする
- 照明に気を配る
これらの安全対策は基本ですので、高齢者や小さい子どもがいる場合は行っておきたいです。また、高齢者や小さい子どもがいない場合であっても、日々安心して家内で過ごせるようにするために、対策を行っておくことをおすすめします。
1つ1つの対策方法について詳しく解説します。
手すりを設置する
実家の階段に手すりがないという方も多いのではないでしょうか?手すりの設置は建築基準法によって義務化されています。しかし、建築基準法に手すり設置の項目が追加されたのは平成12年なので、それ以前に建てられた階段には手すりがないことも多いです。
建築基準法には「階段の少なくとも片方には手すりが必要」また「階段の壁がない側には必ず手すりが必要」と記載されています。
つまり、両側に壁がない階段でも、手すりは必須ということです。手すりがなく壁だけだと、踏み外した際にとっさに掴まることができません。
また、壁がない階段の場合、手すりは横からの転落を防ぐために大切です。立ちくらみが起きるなどの理由でバランスを崩し、横から落ちてしまうことはあります。
平成12年以前の建築物であれば、手すりを設置しなくても違法にはなりませんが、現在の建築基準法上の安全基準に合わせるためにも、手すりを後付けすることをおすすめします。
手すりをどちらに付けるかですが、基本的には降りるときの利き手側に付けることが多いです。降りるときは、踏み外したときに1番下まで落下してしまう危険があるためです。安全性を高めるなら、両側に付けるのもおすすめできます。
なお、手すりの設置は専門業者に任せた方が良いです。自分で設置することも可能ですが、取り付けが甘いとしばらく使っていてぐらついてしまうこともあります。
また、手すりの安全性をより高めるなら、次の3つを重視することが大切です。
- ①目的に応じて形状を変更する
- ②握りやすい太さ・高さを選ぶ
- ③途中で途切れることなく設置する
①目的に応じて形状を変更する
階段の手すりは丸棒タイプとフラットバータイプがあります。
丸棒タイプはどの角度からも握りやすいのが特徴です。また、握りながら進行方向に向かって手を滑らせることができます。
一方フラットバータイプは、手すりを握るのが厳しい方におすすめです。フラットバーなら握らなくても、手の平で押すようにして歩くことができます。
②握りやすい太さ・高さを選ぶ
手すりは製品によって太さが異なるので、握りやすい太さを選ぶことが大切です。手すりが太いと握るのに握力が必要になります。家族の中でもっとも手すりが必要な方の手の大きさや握力に合わせましょう。
また、高齢者の方がいるなら手すりの高さは少し低めにした方が良いです。高齢者は腰を曲げて昇り降りすることが多く、位置が高いと使いにくいです。
③途中で途切れることなく設置する
手すりは途中で途切れることなく上から下まで設置するのが基本です。途中で手すりがなくなると、バランスが取れなくなりかえって危険になることもあります。
階段の踊り場にも手すりがあった方が良いです。手すりがないと、踊り場で方向転換するのが大変になります。
勾配をなるべく緩くする
階段の勾配はなるべく緩くした方が良いです。勾配とは水平面に対する階段の傾き度合いのことです。踏面(足を乗せる部分の奥行)を長くし、蹴上(一段ごとの高さ)を低くすることで、勾配が緩やかな階段になります。
勾配を緩くするとスペースを取ってしまいますが、高齢者の方も楽に昇り降りできるようになります。目安としては勾配は普通の人用では35〜45度、高齢者用では40度程度までにすると使いやすいです。建築基準法ギリギリに作るとかなり急な階段になってしまうので、このぐらいを意識すると良いです。
階段を滑りにくくする
階段の段板を滑りにくくすることも大切です。踏面の先端にはノンスリップ加工が施されているケースもありますが、その加工自体にそれほど滑り止め機能はないのと、古い階段は塗料が剥がれて滑りやすくなっていることもあります。
階段を滑りにくくする対策としては次の2つが挙げられます。
- 階段の踏面を張り替える
- 滑り止めテープを貼る
①階段の踏面を張り替える
1つ目は階段の踏面を張り替える方法です。踏面の張り替えはリフォーム会社に依頼することができます。
たとえば、滑りにくい素材のコルクに変更したり、滑り止め加工がされたものにしたりすることが可能です。
②滑り止めテープを貼る
2つ目は滑り止めテープを貼る方法です。こちらは手軽に行うことができます。ただし、剥がれないようにしっかり貼らないといけません。
テープの一部分が剥がれてしまうと、足が引っかかってしまい余計に転落のリスクが高まります。また、テープは耐久性が高いものを選びましょう。
滑り止めテープの中には光るタイプもあります。光るタイプは夜でも足元が明るくなり、踏み外しを防止することができます。
照明に気を配る
安全対策を行うために階段の照明にも気を配りましょう。照明の種類によっては、足元が上手く照らされず段差が見えにくい場合があります。なるべく明るくて影ができにくい照明を選んだ方が安心できます。
ただし、照明が眩しすぎるのも良くありません。眩しいと照明に気を取られてしまい、踏み外す原因になってしまいます。
足元を照らすことができるフットライトを併用するのもおすすめです。フットライトを使えばより段差が見えやすくなります。人が通るときだけ点灯するセンサー付きのものなら、消し忘れる心配もありません。
階段で遊んでしまう子どものための安全対策
写真:カツデン/シースルー階段「FRIS」
小さい子どもは階段で遊んでしまうことも多いです。危険な場所だと教え込んで理解させれば、怪我につながる遊び方をしない子どもが多いと言われています。
が、念には念をと気にされる方は、上記で解説した4つの安全対策に加えて、次の2つも検討してみてください。
- 落下防止ネットを付ける
- 階段にゲートを付ける
1つ1つの安全対策について詳しく解説していきます。
安全ネットを付ける
階段の横に壁がない場合は、手すりを付けることで安全性を高められます。しかし小さい子どもの場合、手すりがあっても隙間から顔を出して遊んでしまい、そのまま落ちてしまう可能性もあります。
そこで、手すりの隙間を埋めるネットがあれば、そこから落下することは防げます。
安全ネットは5,000円程度で購入できるうえに、取り付けも簡単です。さらに、子どもが大きくなったら取り外せば良いため、階段のデザイン性をずっと損なってしまうということにはなりません。
ただし、ネットの存在で手すりの掴みやすさを多少犠牲にする部分もあるので、どちらを重視するのかをよく考えてから設置するようにしましょう。
階段にゲートを付ける
もう1つの対策として、ベビーゲートを階段上、階段下に付ける方法があります。ゲートを付ければ小さい子どもが昇ってしまうことを避けられます。
ベビーゲートには置くだけのものもあれば、壁に固定できるものもあります。ただし、壁に固定するものは壁に傷が付いてしまう点は注意が必要です。
ベビーゲートの値段は2,000円〜2万円程度です。サイズやデザインもさまざまな種類があるので、用途や階段との相性を踏まえて選ぶことをおすすめします。
階段の安全対策を行う際に使える支援制度
写真:高齢者がホームケアで階段を昇る際に、松葉杖で高齢者をサポートする写真素材
出典:Shutterstock
最後に、階段の安全対策を行う際に使える支援制度を2つ紹介します。
- 国の介護保険制度
- 地方自治体の補助金
この2つは高齢者がいる住宅をリフォームする際に使える制度です。それ以外の場合には活用できない点はご注意ください。
各支援制度の特徴について詳しく解説していきます。
国の介護保険制度
1つ目が国の介護保険制度です。高齢化社会に伴い、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みが必要になったため、制度が導入されました。
こちらの制度では、高齢者が住む住宅をリフォームする際の費用を、最大9割支給してもらえます。支給限度額は20万円の9割(18万円)です。階段に手すりを付けたり、段差を解消したりするリフォームが対象となります。
介護保険制度を活用するには、申請書の提出が必要です。また、工事完了後は領収書などの証明書類も提出しなくてはいけません。その後、支給が必要と認められた場合、住宅改修費が支給されます。
こちらの支援対象となるのは、要支援・要介護状態となった65歳以上および、末期がんや関節リウマチなどの老化による病気が原因で要支援・要介護状態となった40~64歳です。詳しい支援対象については、「介護保険制度の概要」を参考にしてください。
参考:介護保険制度の概要
参考:介護保険における住宅改修
地方自治体の補助金
2つ目が地方自治体の補助金です。自治体によっては、高齢者が住む住宅をリフォームする際の補助金制度を導入している場合があります。その地域に住んでいる方なら支援を受けることが可能ですので、地域の健康福祉センターなどで制度について聞いてみると良いです。
たとえば、東京の荒川区の「高齢者住宅改修給付事業」の1つに「住宅改修予防給付」というものがあり、手すり取り付けや段差の解消を行う際に活用できます。こちらは、介護保険の要介護認定の結果が非該当となった方で、住宅改修が必要と認められる方が対象です。
まとめ
本記事では階段の安全対策について解説しました。階段の安全性を高めるにはどういった点に気を配れば良いのか、お分かりいただけたかと思います。
階段からの転落事故を防ぐためには、手すりを設置する、勾配を緩くする、階段を滑りにくくする、照明に気を配る、の4点を重視して設置・リフォームすることが大切です。
この中でも、手すりの設置は安全性を高める効果が高いうえに、リフォーム費用も安いです。それに、建築基準法では手すりの設置が義務化されていますので、現在の安全基準に合わせるためにも設置をおすすめします。
また、小さい子どもがいる場合は、階段にゲートを付けて昇れなくする、もしくは安全ネットを付けて転落を防ぐ方法があります。四六時中子どもから目を離さないというのは難しいので、どれがもっとも効果的か考えて、自分の考えに合った対策をしましょう。