こんにちは。
ベトナム駐在の坂田光穂です。
ホーチミンに住み始めてもうすぐ1年半が経とうとしています。
こちらでの生活はとっても快適で、ノーストレスで仕事をしています。
まだまだ会社として達成すべきミッションは多くあるのですが、ベトナム人のスタッフたちが成長してきて、少しずつ体制も整ってきたことで、出来ることが増えている実感があります。
さて、僕が勤務しているホーチミンオフィスは、開設してから半年が経過しました。
工場とは別にオフィスを構えるに至った経緯や、現在の間取りにした理由など、今更感ありますが記録しておこうと思います。
これから海外に拠点を作る方にとって参考になれば幸いです。
まずはオフィスを作って何をしたいか?
僕がベトナムに来るまでKATZDEN ARCHITEC VIETNAMの拠点は、Binh Duong(ビンズン)省にある工場のみでした。
ホーチミンから約2時間という立地に、設計、製造、経理などの全てのスタッフが勤務していました。
しかし営業担当として僕がそこに出勤してしまったら、ベトナム南部最大の都市であるホーチミンの顧客対応がしづらくなってしまいます。
さらに、
・営業業務のスタート時点では売上があるわけでもない
・そもそも内需向けの商売が成り立つか分からない
という理由で、僕の自宅の一室をオフィスとしてスタッフを勤務させていました。
しかし半年ほど経ってもスタッフが定着せず、皆1〜2ヶ月ほどで辞めていってしまいました。
その理由は給与や待遇など様々あれど、ついに3人目のスタッフから辞める旨を伝えられたとき、
「これは上司としての自分の問題なのか?それともオフィス環境なのか?」
と色々と悩んだ末、まずは分かりやすく改善しやすい職場環境を変えてみようと考えていました。
一方で、日本の物件の作図を行うCADセンターは順調に売上を伸ばし、設計スタッフの人数は工場のオフィススペースのキャパシティーをオーバーしつつありました。
採用をする際にも、ホーチミンで勤務出来ないことで断られるケースが出てきました。
そこで、その双方の解決手段としてホーチミン市内にオフィスを作ることにしました。
場所決めと契約でベトナムを実感する
ではオフィスを探そうとなり、いくつかの不動産屋経由で紹介してもらいましたが、いずれもなかなか「これだ!」と思う物件がありませんでした。
というのも、ホーチミン市内の不動産価格は急激な上昇傾向にあり、それに便乗して本来の価値以上の家賃をふっかけてくるところが多いためです。
中心地から車で10分圏内という条件から少しずつ広げていき、ついに30分圏内としたところで良い物件が見つかりました。
1フロア120㎡で1750USD(約20万円)/月の物件です。
ちょっとした路地の中にあるものの、新築できれいなオフィスビル、さらにガードマンもいる。
好条件だったので、早速契約をしたいと話を進めていくと、「やはり家賃を2000USDに上げたい」という話を急遽オーナーからされました。
どういうことか聞くと、どうやらその物件には複数の会社から問い合わせがあり、人気があるようだから家賃アップさせたいとのこと。
「え、ちょっと待てよ。数日前に1750USDで契約するって言ったよね?うちが一番最初に決めてたよね?」と話しても聞いてもらえず。
そんな物件のオーナーなら今後どんな手のひら返しがあるか分からないので、「そんな条件ならこっちから願い下げだよ!」という”気持ち”で丁重にお断りしました。
その後も地道に探し続け、15件は見たかというところで妥協できそうなところが見つかりました。
1フロア50㎡で4階建の元家具デザイン会社だったところを1棟で1500USD(約18万円)/月という物件です。
さらに内装は自由に工事してOK。壁に穴を開けてもOK。
1階をシースルー階段を始めとした製品のショールームにしようと思っていたので、まさにうってつけでした。
さっそく契約を済ませようとすると、家賃を毎年10%UPさせたいとの条件をまたしても後出しで話されました。
もうここでゴネたらいつまでも決まらないと思ったので、その条件を飲んで契約し、内装工事をスタートさせました。
家具デザイン会社時代の内装
オープンが遅れに遅れる
契約時のスケジュールでは、2月に契約して1ヶ月工事期間をとり、3月から使えるようにと考えていました。
工事期間のうちにショールームに展示するための製品やデスクなどを自社工場で製作すればピッタリというスケジュール感です。
内装工事はベトナム人の知り合いの会社に委託しました。
デザインや家具など、僕が手書きでイメージを共有したものをパースに落とし込んでもらいました。
製品を適度に散らせながらも、全体的にはシンプルで、「実際の住宅に落とし込んだらどうなるか?」をイメージしやすいようにしています。
ところが不幸なことに、いや売上があるというのはとても幸せなことですが、急遽そのタイミングで工場の生産ラインが忙しくなり、オフィス用の設備を作ることが出来なくなってしまいました。
さらにその1ヶ月という期間内では、ホーチミンで働く設計スタッフが決められず、新たな営業スタッフも雇えずという状況が重なり、完成を4月末まで伸ばし、5月からオフィスをオープンすることにしました。
契約を急ぎすぎて、なんと3ヶ月分の家賃を無駄に支払うことに。
こればっかりは事前に予期しておくことも出来ず、やむを得ないことと涙を飲みました。
様々なことがあって完成した内装のBefore Afterはこちら。
1階をショールームと営業事務所に。
Before
After
2階はミーティングルームと設計スタッフ用のスペースに。
Before
After
国内初のスチール階段メーカーショールーム
結果として、とてもきれいなオフィス兼ショールームが出来上がり、その後は働くスタッフも増えて定着し、オフィスがあることの効果を改めて感じています。
オープンするやいなや、KATZDEN ARCHITEC VIETNAMも所属するJapan H&Fという組合のイベントで当オフィスを使い、製品のプレゼンとディスカッションを行いました。
約30人ほどのベトナム人の方に製品やオフィスを見てもらったところ、
「階段のデザインや性能はこれまでベトナムになかったものだね」
「こうやって実物をホーチミン市内で見れる場所があれば、施主に対しても説明しやすいね」
「オフィスの内装がシンプルで製品のコンセプトが伝わる」
など上々の感想をもらいました。
我々KATZDEN ARCHITEC VIETNAMがターゲットとするのは、主にローカルの設計事務所や住宅ビルダーです。
これから実際に様々な企業と商談を重ねていく中で、このショールーム兼オフィスを用いてスチール階段を市場に浸透させ、ベトナムの住宅を美しく快適な空間にしていきたいと思っています。
ただ、ベトナムの住宅に階段や手すりを販売していくには、かなり高いハードルがあることが後に分かってきます。
そのお話はまたいつかお話するとして、今回はここまでとします。