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KATZDENブログ
2019.06.25 商品開発

新商品開発秘話 Vol.4 『ObjeA PREMIUM』

ObjeA PREMIUM(オブジェアプレミアム) 開発秘話

設計部の小島啓樹です。
1999年に入社以来ずっと設計に携わり、もうすぐ20年経ちます。
仕事に没頭してしまう性格で、気が付けば外が暗くなっているなんてことが一昔前ではしばしばありました。
設計するにあたって「常に顧客ニーズを考ること」を信条に注力しています。

15年前に開発し、発売をしたシースルー階段『ObjeA(オブジェア)』
その担当を経験したこともあり、『ObjeA』のシンプルさやスタイリッシュさを損なわずに共用階段として使用できる堅牢さをも持った新しい階段『ObjeA PREMIUM(オブジェアプレミアム)』の開発担当となりました。
製品紹介 詳細

ObjeAをさらに進化させるというミッション

おかげさまで現在売れ筋商品である『ObjeA』を、どのようにして進化させ、商圏を広げるか…という議論はこの16年間で幾度か交わされました。
例えば、屋外使用ができるように耐蝕性を持たせる案や、高級感を演出させるオプションを追加する案、あるいは逆に廉価版を考案してみたり…。
そうして発案してきた中でも、実現性や市場の可能性の観点から、「戸建住宅以外のアパートや店舗、オフィスなどの共用部分における階段」という案が次に拡大していく方向性として有力でした。

そんな中、某ハウスメーカー様よりアパートの共用部階段の設計依頼を頂いたことをきっかけに、本製品の開発プロジェクトが発足されました。

多人数で利用するための必要強度を探る

『ObjeA』を始め、カツデンアーキテックで販売している階段製品は、15万回の昇降に耐えることを最低限の強度基準としています。
この15万回という回数は、「4人家族が1日5回、20年間使用」した場合を想定して設定されており、実際におもりで繰り返し衝撃を与える試験を行った上で、それぞれの製品はリリースされます。

しかしながら、戸建住宅であれば15万回で良いですが、共用部に使用される階段であれば、さらに多くの衝撃が与えられると想定されます。
そこで、「10世帯相当の人数が1日3回、20年間使用」すると想定し、下記の通り算出した上で、キリの良い回数として100万回の衝撃に耐えることを強度基準としました。

4人家族 × 3回/日 ×10世帯 × 365日 × 20年 = 876000回

それほどの強度が必要となる製品を開発することは初めてだったのですが、求める強度をなかなか満たすことができず、試行錯誤することとなりました。

繰り返す試行錯誤

カツデンアーキテックの階段製品は、工場で製造したパーツを現場で組み立てる「ノックダウン工法」を採用しています。
しかし、共用部階段をノックダウン工法で行うとなると、戸建住宅の階段と比べて使用頻度がはるかに多いことから、昇降時の振動の繰り返しによる接合部の緩みや外れが大きな課題となりました。
そこで、特殊なナットの使用や、接合の手法などを様々試していくと同時に、揺れそのものを軽減させる方法も検討していきました。

一次試作では、下図のようにささら桁の側面ボルトを溶接し、段板の側面とボルト固定することで剛性を向上させようと試みました。
しかしながら、図に示すようにボルトによる1方向のみの固定となるため、ささら桁と段板の剛性をUPさせるには拘束力が不十分でした。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 一次試作

段板が横方向にわずかでも動くことができるということは、その積み重ねによって下図のように階段全体の歪みに繋がり、揺れを発生させることを示しています。
つまり裏を返せば、蹴込み部分が平行四辺形に変形できないようにすれば、揺れは発生しないのではと考えました。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 一次試作 歪み

二次試作では、蹴込み板を設け、段板と一体型とする構造にしました。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 二次試作

段板と一体になった蹴込み板を次の段板と固定していけば、蹴込みの空間は長方形のまま拘束され、一次試作のように平行四辺形に変形できなくなります。これにより揺れを抑えることが可能となりました。
しかしながら、このように蹴込み板を付けてしまっては、せっかくのシースルー階段の抜け感が損なわれてしまいます。やはりこれではデザイン性から採用には至りませんでした。
どのようにして「シースルー性」と「強度(剛性)」を両立させるか、さらに設計検討と試作を繰り返すこととなります。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 二次試作

最終納まりでは、下図のようにささら桁と段板を、縦と横の2方向からボルト固定ができる仕組みを考案し、さらに特殊な弛み止め機能を持ったナットを採用しました。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 最終仕様

これにより、ささら桁と段板が溶接に匹敵する接合強度となり、蹴込み部分が平行四辺形に歪むことに対する十分な抵抗力が得られました。結果、階段全体の揺れの軽減に繋がりました。
二次試作と比較しても、強度を同等に保ったまま、蹴込み板が無くなりスッキリとした見た目となりました。顧客ニーズに応えるデザインに落とし込むことができました。
この段板の仕様は未だかつてない当社オリジナルの形状のため、意匠登録を行いました。
共用部シースルー階段ObjeA PREMIUM 最終仕様

ただ、この仕様でリリースはしましたが、まだ完成ではありません。
上述のささら桁と段板の固定部の仕組みは、『ObjeA』と比較すると多くの製造工数がかかってしまいます。
生産リードタイムを向上させるために、他の製品同様、改良を繰り返していきたいと考えています。

ノックダウン式で設計された高強度の階段

現在のアパート等に使用される共用部階段は、そのほとんどが溶接によって一体化されたものです。一体化された階段を設置するためには、上棟時にクレーンによって搬入する必要があります。
しかし、当社の工場設備、今まで培ったノウハウの観点から、ノックダウン工法による階段製品であることが設計条件として必須でした。

ノックダウン工法には、以下のようなメリット/デメリットがあります。
[メリット]
・現場での溶接や塗装が不要
・工場で安定した品質の仕上げをすることができる
・重機を使用せずに施工ができ、段取り等で現場工程に影響を与えない
・段板や手すりの交換などのメンテナンスが容易

[デメリット]
・強度を確保しづらい(充分な強度を得るには高度な技術が必要)

この双方のバランスから鑑みて、2003年の『ObjeA』開発時においてもノックダウン工法を採用しました。
『ObjeA』は戸建住宅をターゲットとしており、そこに求められる強度は十分に確保することができていました。

ところが共用部階段である『ObjeA PREMIUM』は、より多人数で使用することが想定されます。前述のような様々な設計上の工夫を施すことで、なんとか今回もノックダウン工法のデメリットを乗り越えることができました。
100万回の衝撃試験にも耐え得る高強度のノックダウン式シースルー階段を開発したことで、既に持っていたメリットを活かしつつ、アパートやオフィスなどの今まで設置されづらかった様々な空間を美しく彩ることが可能です。

今まで力が及ばずお断りしていた大型物件での要望や、強度上不利になってしまう緩やかな勾配の階段、有効幅の大きな階段など、幅広く対応できるようになりました。多くのお客様に喜んでもらえるのではないかと思っています。

製品紹介 詳細
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