こんにちは。カツデンアーキテック編集部です。
今回は近年じわりじわりと人気が上がっている「玄関土間」について。
以前からアウトドアブームからキャンプ用品を置く場所としても人気が出ていましたが、昨今コロナ禍での衛生意識が上がったことが追い風となっています。
ただその中でふとわく疑問。そもそも”土間”とは?
改めて聞かれるとうまく説明ができないし、実際取り入れるにしてもどう使っていいのか…と思う人も多いと思うので実際の事例とともにご紹介していきます。
1.そもそも”土間”とは
日本の住宅は一般的に靴を脱いで過ごしますが、家の中で土足で過ごす場所を土間といいます。
玄関との違いとしては、そこで何かをするかどうかにあたり玄関は靴を脱ぐだけの場所。土間は靴を脱がずに何かできるスペース、といったかたちです。
土間の歴史は古く、縄文時代の竪穴式住居が始まりといわれています。そこから江戸時代になると、時代劇に出てきたような土間+小上がり+畳の住居スタイルとなり、近隣住民や客との交流の場として使われていました。
とはいえ農機具の手入れをしたり、竈(かまど)を置いて炊事をしたりと、メインは作業空間として幅広く使われていました。
20世紀初頭からは西洋文化が入り日本の住宅も変わっていくにつれ次第に土間が消えていき、玄関は靴を脱ぎ履きするだけの場所になっていったのです。
しかしそんな土間が長い時間を経て、メリットの多さから再び人気を集めています。
土足文化の欧米と異なり、日本では靴を脱いで家の中で過ごします。そんな中で靴を履いて過ごす土間のメリットは何になるのでしょうか?
それはずばり”多機能性”です。
実際にいくつか使い方をご紹介していきます。
2.家の中にそのままin!ベビーカーなどの収納スペースに
人気のアウトドアグッズなどはもちろん、ベビーカーや自転車・スーツケースなど、外でつかうものはタイヤなどが汚れており、拭くのも少し手間だったりしませんか?
そんな時に土間は汚れてもいい上にすぐに掃除がしやすい場所なので、そういったものを置いておくスペースとして最適です。
ほかにも、雨具やコートなどもおすすめ。
濡れた雨具だけでなく、花粉の時期などはいくら入る前にコートをはたいても花粉がついてしまいます。
土間にコートをかける場所があれば、居住空間に花粉を持ち込む可能性を減らすことができ、次の日も玄関で着ることができます。
3.趣味もメンテナンスもここで!自転車用ガレージから観葉植物展示まで
自転車も最近こだわってパーツなどを組み替えてオリジナルの自転車にして、メンテナンスをしっかりする…という人も多いのではないでしょうか?
外に置いておくと雨風で劣化しやすい自転車も、室内に置けば雨風にさらされることのないうえ、土間であればメンテナンスも一緒にできてしまいます。
また、プランターや鉢をつかってガーデニングを楽しむ場合にも同じく雨風も汚れも気にせず土間に置くこともでき、必要な道具も土間においておくことができます。
窓から光が差し込む土間スペースにすれば、そのまま植物を育てることも。まるでセレクトショップのような華やかな空間になります。
4.天気に左右されない場所!子どもとペットの遊び場に
元気いっぱいの子どもは目を離すと散らかしたり、クレヨンで床に落書きしたり…有り余った体力で何をするかわかりません。
そんなときに遊びを制限するのではなく、この場所なら自由に!というスペースに土間はいかがでしょうか?
小さいうちは泥遊びをしたり、おやつを食べたり。
小学生になったら汚れやすい書道の宿題なんかも掃除しやすい土間スペースであれば室内よりも気になりません。
またペットスペースとしても土間は有効です。
散歩から帰ってきて脚が汚れてるときに拭いたりするスペースとしてだけではなく、暑いときに涼めるスペースとしても使えます。
冬は土間は寒くなりがちですが、夏の暑い時期は逆にモルタルやタイルといった土間は冷たくて気持ちのいいスペースに。
ただし元気すぎる犬だと玄関を開けた瞬間に飛び出してしまうので、飛び出ない工夫が必要になりますね。
5.ゆるやかな中間領域に!来客スペースに
作業場としての土間スペースの活用以外にも、日本の古来で使われてきた来客スペースとして使う例も。
家族がくつろいでいる時や、家に上がってもらうほどではない来客の対応の場合などに、客間として使うことができます。また、広めのスペースにすることでちょっとしたパーティーをするといった家庭も。
また、外と内をあいまいにする土間空間は椅子だけでなく机を置いて家族のゆるやかなスペースに。
第3の場所として使うことで違う話ができたり、はたまたテレワーク時の気分転換にも使えます。
6.玄関土間を取り入れるときの注意点
さまざまな用途に使える玄関土間ですが、注意点がいくつかあります。
特に注意なのは広さや寒さ対策。
まず玄関土間を作ることで多目的スペースは生まれますが、その分1階部分の他の居住空間が狭くなります。
とりあえず作っておこう!といって後悔しないように、何の目的で造るか考え作ることをお勧めします。
次に寒さ。土間は土もしくは基礎の上に設けるため、冷気や湿気が家の中に入りやすく底冷えしやすいです。そのため、しっかりとした断熱対策や換気をしたり、長時間使う予定があるなら床暖房や薪ストーブを設置すると快適に使えます。
7.土間に使われる素材って?
よく土間を調べるときに出てくる「三和土(たたき)」。赤土や砂利などに消石灰やにがりなどを混ぜて塗り固めた素材です。昔の日本家屋ではよくつかわれてきた一方で、土を仕上げ剤として使うことから経年劣化で凹凸ができやすく、他の仕上げのほうが安いため近年ではあまり使われていません。
その一方で言葉は変化し、現在は土間の仕上げ材を総称して指すようになりました。
現在の“たたき”はいくつか種類があり、
仕上げ材の中でも耐久性がありかつ手入れが簡単な「コンクリート」
強度はコンクリートより劣るものの土間素材の中では安く施工性が高い「モルタル」
バリエーションや色が豊富で玄関としてはよく使われることの多い「タイル」
さまざまな大きさの石を混ぜ込むことで味わいある玄関に仕上がる「玉砂利洗い出し」
などなど。
それぞれ価格や手入れ、経年劣化などのデメリットももちろんありますが、使う素材で大きく印象が変わるものですので、ぜひデメリットとメリットを見たうえで素材を決めてください。
8.玄関土間を上手に使って快適な生活を!
現代に復活した土間は、従来の使い方以上に趣味や収納など利便性に富んだものになりました。
使う人によってさまざまな使い方ができ、土足で歩ける空間。
もし使い方案でこれはぜひ必要だと思ったりスペースがあれば、とりいれてみるのはいかがでしょうか?