安全性を高めるためや介護のためなどで、新たに階段に手すりを設置することを検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。DIYに関心の高い方は、階段の手すりをDIYで設置することをお考えかもしれません。実際に、階段の手すりをDIYで取り付けた事例は多くあるので、業者によるリフォームと比較して、よりご自身に合う選択をしていけると良いですね。
この記事では、階段の手すりをDIYで設置するメリットやデメリットから、手すりの選び方や設置方法、注意点について解説します。
階段の手すりについてお悩みの方や、手すりのDIYを検討されている方は、この記事をぜひご一読ください。
階段の手すりをつける理由は?
写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」
法律で義務付けられている
階段の手すりの設置については、建築基準法施行令の第25条で定められています。ポイントを簡単にまとめると、以下の通りです。
- 高さが1mを超える階段では、「両側に手すり」or 「片側に手すり+もう片側に側壁やこれに代わるもの」が必要である
- 高さが1m以下の階段では、上を満たさなくても良い
- 幅が3mを超える階段で蹴上が15cmより高いまたは踏面が30cmより狭い場合は、中間手すりも必要
高さが1mを超える階段では、建築基準法上少なくとも片側には手すりが必要となります。
階段の安全を高める
建築基準法を満たしていても、より安全な階段にするために手すりをつけることは効果の高い方法です。階段は足を滑らせたり、躓いて転倒したり、怪我を引き起こしやすい場所です。手すりがあることで、足が滑ったり躓いたりした際も転んだり落下したりすることを防げます。
階段の昇降時の支えとなる
階段の昇降は、足腰に大きな負担がかかります。ご高齢の方や足腰の弱い方にとっては、手すりに手をかけることで、足腰に力が入りやすくなり、自力で階段の昇降がしやすくなります。
また、年齢や身体の状態に関わらず、私たちも階段の昇降時に無意識に手すりに触れてはいませんか。手すりをぎゅっと握らなくても、手を添えるだけでも身体を安定させて、階段を使うことができるでしょう。
階段の手すりのDIYを行うメリットは?
写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」
階段の手すりをDIYで設置するメリットには、以下の項目が挙げられます。
- 使う人に合わせて形状や高さを調整できる
- 費用が安い
- DIYの材料が豊富に流通している
- DIYの実例や方法を簡単に知ることができる
一つずつ詳しく解説します。
使う人に合わせて形状や高さを調整できる
たとえば、階段の手すりの高さは75〜85mが一般的とされていますが、実際に手すりを使用する方の身長や手の長さ、筋力などによって、使いやすい高さは異なります。
工事の施工会社やリフォーム業者も、もちろん施主の要望を聞いた上で手すりの設置を行います。ですが、手すりの種類を自由に選んだり、より細かく何回も微調整をして高さや位置を固定したりする場合には、DIYが向いているかもしれません。
費用が安い
階段の手すりのDIYにかかる費用は材料費と工具代のみです。一方で工事の施工会社やリフォーム会社に依頼すると、材料費のほかに人件費や事務費用がかかります。
したがって、階段の手すりをDIYで設置すると、費用を安く済ませることができます。階段の形状や手すりの種類にもよりますが、DIYで設置する場合は材料費のみで5〜10万円程度である一方、リフォーム会社に依頼する場合は、材料費に加えて12万円程度〜の施工費がかかります。
DIYの材料が豊富に流通している
最近ではDIYへの関心が高まり、本格的なDIYの部材や材料も市販されています。さらに、ホームセンターなどの実店舗で材料を購入するだけでなく、ネットで良いものを見つけて購入することも簡単にできます。
階段の手すりについても、DIYできる手すりの種類が豊富にあり、その中から満足いくものを選んで階段に設置することが可能です。
DIYの実例や方法を簡単に知ることができる
DIYブームやSNSでの発信により、DIYでのリフォーム事例やその方法を簡単に知ることができます。また、DIYに関する書籍も多く出版されています。
このように、たくさんの事例やノウハウを収集して、ご自身に合った方法や仕上がりを選べることも大きなメリットです。
階段の手すりのDIYにはデメリットや注意点も!
写真:カツデン/シースルー階段「ObjeA」
階段の手すりをDIYで設置するメリットについてお伝えしましたが、一方でデメリットもあります。
考えられるデメリットは以下の通りです。
- しっかりと設置しないと事故につながる
- 施工に手間がかかる
- リフォーム業者の施工の方が仕上がりが綺麗な場合が多い
- 壁の内部に下地がないと手すりの設置ができない
それぞれについて詳細に説明します。
しっかりと設置しないと事故につながる
階段の手すりをDIYで設置する場合、ネジやボルトで固定することが一般的です。手すりや、本体も、指定されたり付属されたりしているねじやボルトも、基準値として決められた重さに十分耐えられるように設計され、検証された後に販売されています。
しかし、ネジやボルトが緩んでいたり、手すりが正しく設置されていないと、手すりが引っ張られた時に外れてしまう恐れがあります。
手すりが外れることで、階段から転倒したり、転落したりして事故につながる危険性もあります。
DIYで階段の手すりを設置する時には、説明書をよく読み、しっかりと固定することが大切です。
施工に手間がかかる
階段の手すりのDIY では、材料や工具を一式揃え、ご自身で施工を行うことになります。
リフォーム業者や工務店に階段の手すりの設置を依頼する場合と比べて、書面の契約などの工数は減るものの、施工は手間がかかります。
ネットやDIYに関する書籍で、事前にどれくらいの手間がかかるかを把握した上で、自身で施工をするかどうかを決めた方が良いです。
リフォーム業者の施工の方が仕上がりが綺麗な場合が多い
DIYの経験が少ない場合、強度や性能は十分でも、仕上がりに満足できないという方もいらっしゃるかもしれません。リフォーム業者などプロの施工はやはり仕上がりは美しいです。
事前に階段の手すりのDIYの難易度を調べた上で、DIY行うか、業者に依頼するかを決めると良いでしょう。もちろん、仕上がりが完璧でなくても、正しく設置すれば強度は問題ありません。仕上がりを含めて、一つの思い出にもなります。
壁の内部に下地がないと手すりの設置はできない
階段の手すりは、手すりをねじで壁に固定して設置します。そのため、壁の内部に下地がある場所にしか手すりを取り付けることはできません。
下地の位置は下地探しという道具を使って探し当てることができます。手すりの設置を検討する場合、まずは壁の内部に下地があるかを確認してプランを立てることをおすすめします。
階段の手すりの選び方
写真:DIYされた手すり
出典:ペンションハーモニーブログ
階段の手すりをDIYすることで、手すりの部材を自由に選ぶことができます。ネット通販が流通したことにより、日本全国からニーズに合うものを取り寄せられます。ここでは、以下の項目についてどのようなポイントで選べば良いか説明していきます。
- 形状
- 質感
- 色・柄
- その他
1つずつ詳しく説明します。
形状
階段の手すりでは、円形の断面の棒状の手すりが一般的ですが、それ以外にも楕円形やフラットな断面など、特殊な断面のものも存在します。また、表面に凹凸がついて滑りにくくなった「ディンプル手すり」と呼ばれる手すりもあります。
また同じ円形の手すりでも、直径の大きいものは体重をしっかり支えてくれるため身体が不自由な方におすすめである一方で、直径の小さいものは握りやすいため握力の弱い方に適しているなど、優先事項によって選ぶサイズが変わります。
階段の利用者や使用用途、外観などを総合的に考えて選ぶことをおすすめします。
素材
階段の手すりには、木材、樹脂、ステンレス、スチールなど幅広い素材が使われます。木材の手すりを選ぶと、握った時に木の温もりを感じられますし、樹脂の手すりを選ぶと、滑りにくいため、転倒時など咄嗟の時にグリップがよく効きます。最近では、樹脂性の素材を使いながらも、木材のような外観の手すりなどが販売されています。
実店舗で手すりの部品を購入する場合は、実際に手に取って素材を確かめることも、満足のいくDIYを行う上では大きなポイントです。
色・柄
階段の手すりをお家のインテリアに馴染ませたい場合は、ブラウン、ベージュ、ホワイトなどの控えめな色の中から選ぶと良いでしょう。手すりが設置されてもあまり目立たずに家の雰囲気に調和します。
ブラックやグレーのスチールの手すりを使うと、モダン、シックな雰囲気を醸し出すこともできます。
また、中間ブラケットをアンティークのような真鍮製のものにすることで高級感を演出させるようなこだわりの事例もあります。
手すりをインテリアに馴染ませるか、雰囲気を引き立たせるアクセントにするかを考えると、色や柄を選ぶ方向性が定まります。
その他
周囲が暗くなると手すりが光る蛍光性のものや、ライトが仕込まれている手すりもあります。夜間に階段の昇降が多い場合や、高齢者や小さな子供がいるご家庭は夜間の階段の安全性を高める嬉しい機能です。
階段の手すりの設置方法や必要な工具
写真:手すりのDIYでの設置方法
出典:宮城の家づくり情報局
階段の手すりをDIYする場合、どのようにして設置すれば良いのでしょうか。ここでは、階段の手すりの設置方法の一例や、必要な工具についてお伝えします。
木製の階段の手すりの設置方法は以下の流れになります。なお、手すりの種類によっては、省略できる工程があったり、他の方法で設置できたりすることもあります。詳しくは、部品の説明書や注意事項に従ってください。
①壁の内部の柱の位置を探す
壁の内部に柱がある場所にしか手すりを取り付けることはできないため、柱の位置を最初に探して把握します。柱の位置を探すには、下地探しという器具を使用します。壁の内部の柱に埋め込まれたビスに下地探しが反応して、柱の位置が分かります。
②中間ブラケットを用意する
手すりの壁固定箇所を決め、その数だけ手すりを壁に固定するための中間ブラケットを用意します。
③手すりを用意する
必要に応じて手すりをのこぎりで切るなどの処理を行い、適切な長さの手すりをそろえます。手すりの両端にエンドキャップをつけると、手にトゲが刺さったり、衣服がひっかかったりする危険性もなくなります。
④中間ブラケットを壁に取り付ける
インパクトドライバーを用いて、中間ブラケットを壁に取り付けます。この時に、中間ブラケットのねじは仮止め程度とし、手すりをのせて角度を確認することで、壁にネジの跡が残ることや使いづらい角度の手すりになることを防ぐことができます。中間ブラケットは、90cm程度の間隔で設置するのが一般的です。
手すりの角度に問題がなければ、インパクトドライバーを用いて中間ブラケットのねじを本締めします。
⑤手すりを中間ブラケットに固定する
設置した中間ブラケットに手すりを固定します。設置後は、体重をかけても強度に問題がないかを確認します。
階段の手すり設置によって補助金がもらえる可能性も
介護や介助の目的で階段の手すりを設置する場合、介護保険や自治体によっては補助金がもらえる場合があります。
介護保険制度では、要介護・要支援認定を受けている65歳以上の方が生活環境をよりよくするために手すりを取り付けた場合に、所得に応じて、その費用の7~9割を補助してもらえることもあります。
また、自治体ごとに条件や内容は異なりますが、介護や介助を助成しています。例えば、千葉県千葉市では、要介護認定者である65歳以上の方を対象に、手すりを取り付けるなどのリフォームを施工した場合に最大70万円まで助成しています。
介護や介助のために階段の手すりを設置する場合は、補助制度がないか確認してみることをおすすめします。
まとめ
今回は、階段の手すりをDIYするメリットやデメリット・注意点、手すりの選び方や設置方法についてまとめました。
階段ひとつでお家の印象も変わります。安全性を守った上で、使いやすくおしゃれな階段を目指してみませんか。