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KATZDENブログ
2024.11.26 商品開発

新商品開発秘話 Vol.6 『DANDEL』

商品開発部の早川英哲です。
前回は立体トラス階段『DEROUS(デラス)』の開発秘話についてお話しました。

開発秘話 商品開発 階段 開発者

『DEROUS(デラス)』は久しぶりの階段ブランド開発ということで思い入れが強かった製品です。

今回は『DEROUS(デラス)』以前からラインナップされている片持ち階段『DANDEL(ダンデル)』についてお話します。

『DANDEL(ダンデル)』は前回の『DEROUS(デラス)』よりもシンプルな構造に見られやすいですが、この”シンプル”を実現するためにかなりの苦労がありました。
今回お話しするのは、10年以上にもわたる『DANDEL(ダンデル)』の開発秘話です。
製品紹介 詳細

逃れられない売上減少に屈しないために

片持ち階段『DANDEL(ダンデル)』は、今でこそありがたいことにスキップフロアをはじめとして幅広い用途に使える定番ラインナップのひとつとなっていますが、製品化にいたるまでにいくつもの障壁がありました。

2000年代初期、耐震強度偽装事件(2005)やリーマンショック(2008)などによって、2004年に129万戸だった住宅着工数はわずか3年で78万戸と激減。
業界全体がダメージを受け、当社も同様に少しずつ売り上げを落としていました。

そんな中、ただ下がっていく売り上げを眺めるのではなく、次に出来ることは何かと考えた結果が新たな階段の開発でした。
着手したのはささら桁のない、段板のみを壁につけて支える”片持ち階段”の検討。2010年5月のことです。

当時室内階段として発売していたのは、ささら桁のある『ObjeA(オブジェア)』と『WAVES(ウェーブス)』※2019年廃番のオリガミ階段、ささら桁の代わりにロッドを使用した『FRIS(フリス)』の合計3種類。
段板だけで成り立たせる階段を作るのは初めての試みでした。

参考資料がない中での片持ち階段

ともあれまずは行動、ということでさっそく試作に取り掛かりました。

当時、ささら桁のない片持ち階段はハウスメーカーの設計士が取り入れることもあったものの、メーカー品としては存在しておらず鉄工所が特注で対応していました。
「揺れやすさでいえば、造作階段<シースルー階段<片持ち階段だが、ニーズはある!」
試作第一弾は特に「揺れ」を考慮したデザインにしました。

しかし、設置したところ階段が揺れる揺れないの前に壁自体が揺れてしまいました。想定外です。

「設置壁面に30㎜の合板で補強をし、合板と貫通ボルトで補強すればよい。」

実験を重ねたどり着いた結論です。早速協力を申し出ていただいた実邸で検討をはじめました。しかし、商品開発は得てしてそういうものなのですが、実験の段階ではうまくいっていたものが実邸ではそうもいかず……。

現場で試行錯誤した結果、最終的に設置面に柱を敷き詰めることで壁と階段の揺れを抑えることができました。
さらに、段板の下にブレードを造ることで、本体の揺れを最小限にしました。
「構造面をクリアした!」当時はそう確信し、商品化を進めていきます。

発売と挫折

こうして当社初の片持ち階段は開発着手から1年後の2011年、試作段階で検討していた4種のブレードデザインの中から2種が発売されました。
製品名は当時の開発メンバーから出たアイデアで、「段板が壁から出ている階段」から『DANDEL(ダンデル)』としました。 

『DANDEL(ダンデル)』を発売した2011年は、階段事業発足からようやく黒字化した年で、記念にふさわしい階段ができたと喜んでいました。

しかし残念ながら、発売後ほとんど反応がありませんでした。
片持ち階段は通常よりも揺れるというイメージがあったのだと思いますし、何よりクリアしたと思っていた構造に大きな問題がありました。

壁も階段も揺れないということで敷き詰めた柱が、家の中で設置場所の縛りが出来てしまうということで敬遠されたのです。
また、柱を敷き詰めることで断熱材が入らなくなったり、2階から3階で敷き詰めた場合柱の自重が問題になったり……。

階段自体は揺れが少なかったものの強度の問題上手すりが設置できず、苦肉の策で4段までのミニモデル限定階段として再リリースしましたが、これもまた伸びず。
対策しようにも技術も機会も知識もまだ足りない。いったん開発をストップせざるを得ませんでした。

フラグシップモデルへの挑戦

それから数年。当社では、インテリア・エクステリアの新製品やディテールの改善はリリースしていたものの、新しい階段ブランドを発売できずにいました。

そこで「数年間で技術も知識も蓄えた。今度は新しい階段ではなく、今ある階段のフラグシップモデルを作ろう」と目につけたのが『DANDEL(ダンデル)』です。
フラグシップモデルとは、製品シリーズの中で最も高品位の機能、性能、品質を備えたモデルのことです。

発売から5年後の2016年でもほとんど売れていない『DANDEL(ダンデル)』にどれほどの価値があるのか?
複数の雑誌で特集を組まれていた豪邸階段・建築家の自宅階段などから市場調査を始めました。

そこで判明したのが、採用されている階段のうち約35%が片持ち階段と高い比率を持っていること。片持ち階段自体の需要はありそうです。

需要があるとすると『DANDEL(ダンデル)』が売れなかった理由は、フルスケールができなかった点が大きいのではないかと考えました。
構造の問題ももちろんありますが、ささら桁をなくし空間を広く軽やかに見せたいというニーズを、ミニモデルでは十分にかなえられていないために需要が消えてしまったのだと。

また、デザインに関しても「ブレードを見えないようにしてほしい」「木の段板だけにしてほしい」という声が届いていました。

技術的に段板だけのデザインにすることは可能だったため早速試作。

出来上がったものの、見た目がとてもやぼったい。空間を軽やかにするというテーマからは遠いデザインとなりました。
また、木の部分が現場組みつけだと家具のようにキレイに仕上がらず、仕上げを大工工事にする必要があると感じました。

なにより「ブレードをなくした場合スチール階段を作っているといえるのか?」という考えになったので、
・ブレードは残しつつエレメントを減らす
・高級感のあるインテリアのような美しさ
・立体的なデザイン
を目指し試作を続けました。

そして2017年、新しいバリエーション「TYPE3」を発売。

ブレードをデザインとして昇華させたこのタイプは、空間を軽やかに感じさせるスチール階段としての美しさと揺れづらさの両方を実現しました。
もちろん、手すり付きのフルスケールも可能。施工性もよく、無事フラグシップモデルとして発売することができました。

10周年モデルとしての存在

3年後、室内運動器具『AthleticSeries(アスレチックシリーズ)』が軌道に乗り始めたころ。
さらなる階段の開発として、『AthleticSeries(アスレチックシリーズ)』『NeconoMa(ネコノマ)』のデザイン、施工性などを集結した階段づくりをはじめました。

最初に考えていたものは、『AthleticSeries』の『CUBE(キューブ)』を模したブレードです。
これに板を載せたら階段にできそう!とインスピレーションを得て、ブラッシュアップしていきました。

試作し強度を確認。昇降についても問題がなく、あとは意匠を詰めるだけの段階。
『CUBE』も私が開発したものなので、思い入れも強くつながりも多い!と喜んでいた一方、ある考えが生まれました。より要素を少なくしても問題ないのではないか、と。

『CUBE』を元にしたデザインは、線が多くスタイリッシュさに欠けていました。

そこで私が新たに考えたデザインは、段板と細い斜めの板だけで構成される階段です。

試作を最初に見た社員は「こんなもの揺れるだろう」と口にしながら昇降し、揺れないことに驚いていました。
ささらのある階段と同じくらい揺れにくい階段なのです。全員が驚くのは開発者としても嬉しいシーンでした。

新しい『DANDEL』は、負荷がかかるところに的確に支えをつけることで、要素がほとんどないのに揺れづらいという階段に仕上げることができました。

生まれた階段の名前は『DANDEL ARMS(ダンデルアームズ)』
『DANDEL』第1弾から10年を迎えた2021年に発売するにふさわしいモデルとなりました。

片持ち階段として世の中にある他のデザインよりも、構造が不思議かつ美しいデザインは、建築士の目にも驚きを与えるのだと思います。
2021年に大阪の展示会で実物を展示しましたが当社ブース内で一番関心が高い製品となりました。

さいごに

商品開発は苦難の連続で、いいと思っても売れないこともありますしデザインを優先するとどこかに問題が出てしまうことも多いです。
しかし試行錯誤を繰り返すことで社内外で大きな反応が生まれ、製品が出荷されるたびにやりがいを感じます。

今後も壁は多いですが、よりよい製品づくりを目指したいと思います!

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