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KATZDENブログ
2018.08.24 商品開発

新商品開発秘話 Vol.2 『DEROUS』

インダストリアル トラス 階段

はじめまして。
商品開発部 早川英哲です。
名前は「ひであき」と読みます。
前職で機械加工を長年経験した後にCADオペレーターとしてカツデンアーキテックに入社しました。
2008年〜2017年で物件作図をしながら前職の知識を活かして兼務で新商品開発をしていましたが、2018年より新商品開発業務のみを行うようになりました。
入社時に建築の知識はほぼありませんでしたが、日々学びながら「痒いところに手が届く、任せて安心できる設計」をモットーに商品開発に励んでいます。
今回、開発を担当した立体トラス階段『DEROUS(デラス)』の開発秘話を語っていこうと思います。
製品紹介 詳細

最初に発足したプロジェクトは失敗

ここ数年で、片持ち階段『DANDEL』子供向けのロフト階段『KIDS Lofty』オリガミらせん階段『WAVESらせん』など、階段の新商品を発表し続けてきましたが、ささら桁を使った純粋な直階段はこの10年ほど発表できていませんでした。

最初のスチール階段であるシースルー階段『ObjeA』が発売されて15年が経ち、ノウハウが蓄積してきた今、改めてベーシックな直階段を作り上げることに挑戦するためにプロジェクトチームが発足されました。
チームには、DANDELの開発時にも協力を得たアスク建築設計室の佐藤彰宏氏を迎え、建築士としての視点からも意見を取り入れながら進めていくことになりました。

実は、最初から今のDEROUSのようなコンセプトの階段を作ろうと決めて進めた訳ではありません。
人気商品であるObjeAのディティールを突き詰め、ゴージャスな高級階段へと昇華させることを目標に「豪邸階段プロジェクト」というものがきっかけとなったのです。
しかし結論から話してしまうと、「豪華にすること」をコンセプトにしてしまったことでゴールが見えない状態でまとまらないまま、商品としてリリースするに及ばず失敗に終わりました。

しかしその失敗の過程で得た「ObjeAとは一線を画す階段を作る」という考えを元に、既存の構造にこだわらない新しいコンセプトの階段を作ろうという方向へチームがシフトしていきました。

そんな中、「立体トラス階段がカツデンの製品であったらいいのに」という要望が営業を伝ってお客様から舞い込みました。

奇しくもObjeAの開発と同じ流れに

お客様から要望があって製品化したものは数多くあれど、階段本体に関しては久しぶりでした。
今までお客様からいただいていた要望は、手すり・段板などのパーツ単位のブラッシュアップや、ユーザビリティを向上させるオプションに関するものが多く、新商品としての階段に関して、かつ当社にて製作可能であろうものという縛りを設けると、2003年のObjeA開発以来です。
ObjeAは今や売上No.1の人気商品として成長。
売れ行きが好調なタイミングで、かつてと同様にお客様からのフィードバックによってチャレンジングな課題に向き合うことになりました。

構造とデザインと差別化要素の試行錯誤

まず、「立体トラスとは何か?」という説明をしましょう。
立体トラス構造の一番有名な建物は、東京タワーです。
三角錐や四角錐を組み合わせるのですが、簡単に言ってしまうと強度が高い構造で、それを階段に応用すればシースルー性が高いものが出来上がります。
立体トラス構造を用いた階段自体は目新しいものではなく、アルミ製、スチール製ともに市場にはいくつか存在しています。
そのため立体トラス構造をデザインとして推すのであれば、他社製品と似たデザインとなってしまい、我々がわざわざコストをかけて開発する意味はなくなってしまいます。

当社でその立体トラス構造の階段を検討するにあたり、他とは違う価値をいかに付与するかをまずは考えました。
売れ筋であるObjeAを購入してくれた設計者に意見を聞くと、「セミオーダーメイドで現場に合わせて設計・製造をしてくれるから」という理由が多く返ってます。
そこで新しいこの階段も、規格品としての階高、掛け幅、傾斜の制限を設けるのではなく、どんな物件にも自由に対応できる完全受注生産品とすることが、当社の得意分野でもあり価値と言えるのではないか?という議論に達し、「自由に対応できる立体トラス階段」というのが目標になりました。

その目標を達成するために、立体トラスの接合部には金具を用いず、溶接による自由度の高い接合で作り上げることになりました。
しかしこの方法は諸刃でした。
納まりの自由度は上がるものの、溶接・研磨・塗装が難しく、製造に負担がかかり、結果コストが上がってしまうのです。

そこで採用したのは、普通の丸鋼ではない凹凸のある「異形丸鋼」と呼ばれるものです。
異形丸鋼という素材には、むき出しの溶接ビード、火花とともに散らばったスパッター、塗装ムラでさえも味に変えてしまうような武骨な魅力があります。
そしてあえて「仕上げない」ことでその武骨さを残し、溶接と研磨の工数を大幅に削減=コストを低減することを選択しました。

仕上げないことでのデメリットとしては、人によっては当然粗さが目についてしまうというのがあります。
ただ、ひとつとして同じものがないという「手作り感」が通常の工場規格品とは差別化できる要素となり、「ひとつひとつが世界中でオンリーワンの階段となることがこの商品の特性である」としてリリース。
この新しい階段商品は、異形丸鋼(Deformed Round Steel)の文字を取り、『DEROUS(デラス)』と名付けました。

また、手すりも異形丸鋼の素材感を活かし、『DEROUS 吹抜け手すり』をプレーン、ワイヤー、縦格子、ガラスの4種類の面材バリエーションを同時にリリースすることになりました。
その商品特性も説明した上で、多くの住宅メーカーの設計者やエンドユーザーから問合せをもらい、実際に「一目惚れした!」とすぐに注文が数件入りました。

今までの商品ではマッチしなかった空間へ

あえて仕上げをしないことと異形丸鋼の特性が、意図せず新たな空間提案の可能性につながりました。
リリース前に社内外で、「ヴィンテージスタイル」「インダストリアルスタイル」という2016年ごろから流行となっている空間にピッタリとハマるのでは?と話題となったのです。

参照:VIP WORKS

※ヴィンテージスタイル
使い込んだ古材や床材を家具などに再利用したり、むき出されたコンクリートをそのまま天井にするなど、手を加えて修復するのではなく、あえて古びた内装にするスタイル。
異形丸鋼の持つ独特のテクスチャーは、どこか古めかしいシンプルさを感じさせ、ヴィンテージスタイルの内装にマッチしました。

※インダストリアルスタイル
インダストリアルとは、「工業の」「産業の」という意味合いで、まるで倉庫や工場のような実用を追い求め、見せられるために作られた豪華さとは異なる「機能性としての美しさ」を表現する内装スタイル。
無駄なものが一切なく、飾りすぎない武骨なデザインのDEROUSは、インダストリアルな雰囲気を感じさせます。

このようなスタイルの内装には、ObjeAやDEROUSをはじめとしたシンプルモダンデザインの階段がマッチしないとされ、当社が入り込めない領域でした。
提案できるスタイルが増えたことで、スチール階段をリビングに設置することの良さを実感していただける機会が増えるのは、当社にとってはもちろんですが、より多くのお客様に喜んでもらえることにつながると信じています。

ショールームを見学したお客様の声

上記のような提案の可能性は、実際にショールームでDEROUSをご覧になったお客様とのお話でも随所に感じられました。
やはり万人に受けはしないものの、このテイストが好きな方が一定数いることに開発者として確かな手応えを感じました。
参考までにその一部を紹介します。

【採用を決めたお客様の声】

「もともと機械やバイクが好きなので、この形状(立体トラス構造)を常に身近に置けると思うとわくわくする。」
「立体感があり、見る角度によって形を変えた様々な三角形が見えるのがたまらない。見ていてずっと飽きない。」

ご夫婦で来場されて旦那様の目に留まりました。
トラスフレームのバイクがお好きとのことで、手すり支柱のディティールまで気に入っていただけました。
男心をくすぐるものが、この階段やインダストリアルスタイルにはあるのかもしれません。

「階段の揺れを気にしていたけど、この『DEROUS』は揺れづらくていい。力強い」
「線が細く透明感があるから空間を圧迫しなくて良い。窓側に置いたら光と視野を遮らないし外から見ても楽しめると思う。」

こちらもご夫婦で来場され、揺れないという点を奥様が、デザインを旦那様が気に入ってくださいました。
シースルー性を売りにした階段は、揺れることを気にされるお客様にとっては選びづらいものですが、この『DEROUS』に関しては揺れへの不安を軽減できるほど強固な構造になっています。

【不採用となったお客様の声】

「かっこいいと思うけど、デザインが尖っていてリビングに置くのに勇気が要る。」

他の階段を採用された方のご意見です。
家の雰囲気と合わない、自分好みのインテリアと合わないようなケースでは採用には至りづらいです。
また階段は、家の中ではかなりの大きさを占めるため、階段によってはインテリアの方向性が決まってしまうという点で勇気が必要かもしれません。

「2月にショールームへ来たときには設置されてなく他の階段で進めてしまっている。もっと早く製品情報が欲しかった・・・」
「建築プランがL型形状の階段で進めてしまっている。L型には対応できればよかった。」

一度来場されたことのあるご夫婦が再度来場されてご意見をいただきました。
気に入っていただいたものの、間取上の都合で採用できず、他の階段を採用されました。
構造上、ストレート以外の形状は対応が出来ないため、気に入ったとしても間取が適していない場合は諦めていただくしかなく、残念な思いをさせてしまいました・・・

開発における苦労はバランスの取り方

初期試作当初、製作面での苦労や問題がいくつか起きることを想定していましたが、意外にもまったくと言って良いほどありませんでした。
15年以上続けてきた板金・溶接によるスチール製階段の製作技術の集大成がこのDEROUSであり、社内の技術や設備のレベルが以前に比べて格段に上がっていたことの証明となるでしょう。
もし15年間の経験が蓄積されていない状態で開発を始めていたら、未だに実現できていなかったかもしれません。

初期試作品

反面、開発は苦労と失敗の連続でした。
特に悩まされたのが横揺れに関してです。
強度をUPさせるために筋交いとして使用する異形鉄筋の量を増やすことにより解決できるのですが、それによりコストは嵩み、重量が増え、施工性も落ちてしまいます。
いかに強度・コスト・施工性のバランスの良いポイントを探るか・・・そこに最も労力を費やしました。
その労力を文章に落とし込む術がなく悔やまれますが、とにかく大変でした。

強度試験の様子

まとめ

DEROUSは、今まで当社ではなかった立体的な構造を用いることにより、余分な部材を極限まで減らし、強度を保つことに成功した階段です。
3次元的なデザインが生み出す透明感。
それでいて存在感があって力強い、今までのラインナップとは、大きく異なる階段です。

どんな内装のスタイルにもマッチするものではありませんが、気に入る方は「心底」気に入る階段になったと信じています。
この開発秘話によって、今までのカツデンアーキテックの階段ラインナップと大きく異なる『DEROUS』に興味を持っていただければ、とても嬉しく思います。

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