資料請求
MENUCLOSE
KATZDENブログ
2025.10.21 商品開発

カツデンの階段製品の歴史を振り返れば、これから先の住宅の在り方が見えてくる

カツデン階段の歴史

こんにちは。
カツデンの販促企画部長の坂田光穂です。

今回は、階段メーカーとしてのカツデンが今までどういった階段製品をリリースしてきたのかをご紹介していきます。
各階段製品がどういった経緯で生まれ、そして廃止になったのかなどを見ながら、デザイントレンドの変遷、住宅メーカーの苦労を解決していこうとしていたのかが分かると、これから先どうなっていくのかを、もしかしたら予測できるかもしれません(私にはできませんが)。

カツデンの創業は1958年。
2025年10月現在では67年が経過しました。
創業時はテレビアンテナ、2003年に分社する直前はマンションやアパートのバルコニー手すりの製造をメイン事業としていたカツデン。
最近では、階段メーカーとして認知されていることが多く、取引先である住宅メーカーの方からは
「え、テレビアンテナ屋さんだったの?階段だけ作り続けている会社だと思ってた」
と驚かれることもあります。
そんなカツデンが現在の事業形態に至るまでには、さまざまな紆余曲折がありました。
売れなくなった製品の改廃、事業の撤退、そして品質を酷評されたことも・・・
さて、時は40年以上遡ります。

1982年

世界初のアルミ製らせん階段『ママ・ステッピー』

カツデンの階段製品の原点は、意外かもしれませんが、屋外用アルミらせん階段の『ママ・ステッピー』という商品でした。
世界初のオールアルミ製らせん階段です。

開発のきっかけは、アルマイト(アルミニウムの表面処理)加工からアルミ手すりの製造へとビジネスを拡大していた当時のことです。
開発担当は当初、以下3つの理由から、アルミ製のらせん階段は住宅メーカーにとってのメリットが多く、ニーズがあるのではないかと考えました。
・組み立てながら設置が可能で、クレーンなどの重機が不要
・建物への負担が少ないため、柱や梁の追加が最小限になる
・省スペースで設置できる
しかし、建築基準法でアルミ製品は構造材として認められていなかったため、そもそもアルミ製の階段は通常の用途で使用できないことが発覚。
そこで、「上階が居室でない(屋上など)場合は、アルミ製の階段を使用しても建築基準法第38条に抵触しない」ことに目を付け、陸屋根や屋上用というニッチな市場で勝負に出ることにしました。

結果は惨敗。
以下の理由から売値が高額になってしまったことが原因でした。
①設計作業を外注した
カツデンはアルミという素材に対して知識や経験を持っていたものの、らせん階段の設計に関しては素人だったため、その道のプロである設計事務所に依頼していました。
そこで発生する設計費は内製するより高いうえに、まとまった件数の発注が来ないとボリュームディスカウントをお願いすることもできないことで、1件あたりの設計費が大きかったのです。
②加工用の金型を製作した
らせん階段の要ともいえる「手すりパイプの三次元曲げ加工」を実現する機械が世の中に存在していなかったため、金型を1から作って曲げ加工を行っていました。
金型をつくると、そのコストが減価償却費として製品代に載ってしまいました。

この2点によって、イニシャルコストおよびランニングコストが増加。
原価も売値も高額になってしまったことで、前述したメリットを打ち消すほどのコスト負担を顧客に求めることになり、売れ行きが思うように伸びませんでした。

1992年

価格を大幅に下げた『ママ・ステッピーS』

そこで、数々のコストダウンアイディアを出して誕生したのが『ママ・ステッピーS』。
アルミだけでなく樹脂も併用することで原価を下げつつ、OEM契約を結んで出荷数増加の見込みをつけることで設計費も下げ、徐々に販売台数を増やしていきました。

その後、『ママ・ステッピークラシック』『ママステッピーステンレス』といったバリエーション追加も行い、屋外用アルミ製らせん階段という商品の認知を広げていくことになります。

2001年

デザイン、施工性、コストを大きく改良した『KD Spiral(KDスパイラル)』

屋外用アルミらせん階段『KD Spiral』

『ママ・ステッピー』からセンターポールのデザインを大幅に変更、軽量化、手すりのバリエーションを追加し、屋外用『KD Spiral(KDスパイラル)』を発売。

『KD Spiral』は、商品開発の専門部署がなかった当時、若手のみのプロジェクトチームで開発されました。
コストダウンに成功した『ママ・ステッピーS』より、意匠性を高められると考え、デザインに関して新鮮なアイディアを出しやすく柔軟に議論できるようにと結成。
その柔軟さが現れているディテールのひとつが彫刻のような曲線形状の支柱ブラケット。
これはウィーンでの勤務経験があったメンバーが発案したものです。

加工技術の進歩により、金型に投資をしなくても比較的安価に三次元加工ができるようになっていましたが、『ママ・ステッピーS』からほぼすべてのデザインや寸法を見直したため、これまで安定して加工できていた「丸パイプ(曲面)に正確に穴をあけること」が難しくなっていました。
そこで、簡単に精度よく穴あけができる治具をオリジナル開発し、この問題を解決。
この穴あけ治具は、製法特許を取得しました。

結果、『KD Spiral』は、デザイン性が向上し、軽量化によって施工が楽になり、コストが下がり、上りやすくなるという良いことづくしの製品に生まれ変わりました。
発売から20年以上経過する現在でも年間50〜60台を出荷しており、カツデンのNo.1ロングセラー商品となっています。
ただし、発売当初は戸建住宅の屋上利用目的で設置されるケースから少し変化し、都心のマンションで最上階から屋上への動線として設置されるケースがほとんどです。
マーケットや需要の変化に応じて、設置される建物の種類が変わった点は、非常に興味深い出来事です。

製品紹介 詳細

2002年

カツデン初の室内用製品となる『室内KD Spiral』

室内用スチール製らせん階段『KD Spiral』
アルミらせん階段『KD Spiral』のノウハウはそのままに、素材をスチールに変更しました。
誕生のきっかけは、カツデン代表取締役である坂田清茂の自宅建築。
「自宅のプランを考えていて、ふとリビングに階段があったら面白いんじゃないかと思った」と坂田は語っています。

「家の断熱性能が低かったことから、吹抜けは人気がなくリビング階段は5%に満たなかった時代。ただ、窓には複層ガラスが使われていて気密性能は上がり、昔のように隙間風がヒューヒューという住宅ではなかったので、いけるのではないかと思った。カツデンに室内階段製造の経験はなかったが、『KD Spiral』の図面を見て、スチールに置き換えられるのでは?と考えていた」(坂田)

自宅完成後に実物を見ながら、当時の営業部長との話で「商品化しよう!」となり発売したものの、同様の需要が少なかったのか、思ったほど売れず、後に発売される『Modelia』に吸収される形で廃止になりました。

2002年

ハウスメーカーからのスチール製シースルー階段の依頼

スチール直階段
時を同じくして、「スチール製の直階段を作ってほしい」という相談が2社からあったことで、現在のカツデンの事業基盤となるスチール製シースルー階段の開発に着手することになりました。
『室内KD Spiral』で初めて室内用のスチール製品を製造することになったばかりのカツデンにとっては、ここから苦難の連続が待ち受けていました。
塗装ムラの発生であったり、溶接による熱変形であったり、屋外とは異なる品質基準、アルミとは異なる加工方法によって様々な問題が発生し、何度も作り直すような事態にも陥ります。
少しずつそれらを解決しながらノウハウを蓄積していき、ピーク時は月30台ほどを出荷するようになったのですが、事業の柱になるほどの規模には至らず・・・
とはいえ、この過程で求められた品質や加工時に発生する不具合の多くを特定したことで、翌年発売する『ObjeA(オブジェア)』に大きく影響を与えることになります。

2003年

常識を覆す室内用シースルー階段『ObjeA(オブジェア)』

シースルー階段『ObjeA』
カツデンアーキテックとして分社独立したこの年、前述の依頼から世の中に需要がある可能性を踏まえ、オリジナル製品として室内用シースルー階段『ObjeA(オブジェア)』を発売。
国内初のノックダウン式によるスチール製シースルー直階段です。
製品名は「オブジェ」に由来しており、「リビングという家族の憩いの空間にオブジェとして華を添えることができるように」という思いが込められています。

らせん階段の営業をしている中で、顧客から直階段のニーズが大きかったこと、すでに某社からの依頼で経験を生かせることから発売に踏み切ります。
鉄工所で作られるスチール階段との主な違いは、以下の3点。
・リビングルームにも設置できる品質
・形状が変わっても対応できる設計
・建築現場の工程に影響を与えにくいノックダウン工法
階段をコミュニケーション手段として捉えたことによるデザイン性と、工業製品としての特徴も併せ持つことは、今までのどんな階段とも商品性が被ることはありませんでした。

「リビングルームに設置」というコンセプトには、社会背景が影響を与えていました。
少年犯罪や家庭崩壊が社会問題化していた当時、その原因の一端は「家族のコミュニケーション不足である」という仮説が提唱されていたのです。
そこで各部屋への動線をリビング中心にすることができる『ObjeA』は、そのデザイン性以外でも重要な住宅設備として高い評価を獲得することになります。
新商品開発秘話 Vol.5 『ObjeA』
『ObjeA』の発売に至るまでの開発秘話

2003年ObjeAささら桁
シースルー階段(スケルトン階段、オープン階段、ストリップ階段とも呼ぶ)の特徴の一つである露出した「ささら桁」は、発売当初はクローズのみでしたが、順次、オープン、サンダー、トラスを追加。
2003年ObjeAプラン
階段自体の形状も、ストレートだった対応範囲を、下曲がり、Uターン、L型などに拡大。
お施主様の好みに合わせて選択しやすいラインナップを構築していきます。

ところが、発売からすぐに大きな反響を得ることはありませんでした。
『ObjeA』からはじまった室内階段事業の黒字化までの道のりは、溶接痕が見えないような設計や、ボルト・ナットを極力小さめのものにするなど、少しずつ改善し、顧客からの信頼を得ていくにはここから約7年かかることになります。

製品紹介 詳細

2006年

1年間で5種類のデザインのささら桁を発売

2006年ObjeAささら桁
分社独立から3年、2006年は「ささら桁の新デザインの年」でした。
『ノコ』『フォルテ』、そして廃止済みの『モノ』『ファイ(φ)』『キャル』を発売。
1年で5種類のささら桁を発表し、『ObjeA』のバリエーションを増やしました。

『モノ』は、140mmの丸パイプを使った力桁階段。
日本家屋の特長「床柱(とこばしら)」をモチーフにした1本桁のデザインは、龍の背骨のようで他に類を見ない斬新なデザインは、後に発売される『DEROUS(デラス)』にコンセプトの一部が継承されることになります。

『ファイ(φ)』は、『モノ』をベースに2本の丸パイプを使ったデザイン。
2本にすることで横揺れやたわみに対する強度を上げています。
ささら桁を丸パイプにすることで、柔らかい印象のデザインになったことに加え、頭を打ったときの怪我のリスクを軽減することも付随する効果としてありました。

最後の『キャル』はアルミ製の室内用直階段。
『ObjeA』のもっとも軽いささら桁と比較すると約30kgも軽く、施工性の高さを特徴としていました。

今までにないデザインや施工性が売りの3種でしたが、製造条件が厳しいこと、市場ニーズと求める価格のバランスが釣り合っていなかったことなどから、大きく売上を伸ばすには至りませんでした。

2008年

ささら桁をなくした新しい階段『FRIS(フリス)』

フレキシブル階段『FRIS』
Flexible Rod Interior Systemの頭文字から命名したフレキシブル階段『FRIS(フリス)』は、φ25.4mmの細いロッドと壁固定用のブラケットで段板を支えるシンプルな構造。
階段の主要部材のささら桁をなくし、縦横のラインのみで構成されたデザインで、どんな空間にも違和感なく溶け込みます。
『FRIS』には、以下の4つのメリットがあり、いずれも『ObjeA』を含む世の中のスチール製シースルー階段における悩みを解消するものでした。
・ロッドを自由に立てて、思いのままの形状を実現できること
・ロッドと壁で荷重が分散されて、ほとんど揺れないこと
・部品単位の重量が軽く、配送コストが安いこと
・製造期間を短縮することができ、短い納期にも対応可能なこと

スチール製のロッドで段板を支えるという斬新なデザインは、「階段に昇降機能以外も付加できないか?」という発想から生まれたもの。
コンセプトを練り、上階に設置する際の落下防止柵としての機能や、ロッドに棚を取り付けられる機能を持つ階段として発売されました。

広い土地を購入できない場合や、建築予算をあまりかけられない場合でも、開放的で気持ち良い空間をつくるために、形作るパーツを最小限にして設計することで、同スペックの階段と比較するとリーズナブルな点も特徴です。
もっとも合理的な形で「階段」の機能を満たすデザインは、悩みながら家をつくる多くの方の助けになり、年間で50〜60台ほどを納品するようになります。
現在でも根強い人気を保ち続けていることで、2026年には『FRIS』のデザインと価格をリニューアルした商品が発売されることになりました。

製品紹介 詳細

2009年

昇降時の恐怖感を和らげる階段『WAVES(ウェーブス)』

オリガミ階段『WAVES』
スチール製シースルー階段が少しずつ認知されてきたとはいえ、この頃はまだ戸建住宅全体の0.1〜0.3%と言われていました。
抵抗感の理由は、価格が高いこと、そして蹴込みがないことによる恐怖感です。
後者を解決するために、蹴込みを塞ぎつつ、モダニズムデザインに昇華させたのが『WAVES(ウェーブス)』です。
段板もすべてスチール製にすることで、ほぼすべてを内製化してコストを削減。
すべてをスチールで製作していることは、耐火建築物、準耐火建築物、省令準耐火構造にも対応できることを示しています。
また、角パイプをささら桁として使用することで強度が高く、緩い傾斜にも対応可能な点がメリットでした。
オリガミ階段『WAVES』
これらのメリットに加え、以下の細かい意匠上のこだわりを盛り込みました。
・オリガミのような連続感を出すために、段板の内側に手すり支柱を配置
・段板の縁に曲げ加工を施し、仕上げの省力化と安全性を向上
・軽やかな印象を与えつつ視認性を向上させる角穴のノンスリップ
ところが、ささら桁が裏面に見えてしまう点が意匠面の大きなデメリットとなり、後に発売される『WAVES DANDEL(ウェーブスダンデル)』に吸収される形で廃止されました。

2011年

モダニズムデザインのらせん階段『WAVES Spiral(ウェーブススパイラル)』

オリガミらせん階段『WAVES Spiral』
『WAVES』と同様に、モダニズム建築を想起させるデザインの『WAVESspiral(ウェーブススパイラル)』も同年に発売されました。
らせん階段のネックになりやすい、揺れやすさによる恐怖感を、蹴込みと踏み面が一体化することで解決。
その強度の高さにより、段板有効幅を910mmまで拡張することも可能に。
らせん階段で広い段板幅を実現しようと思うと、揺れやすくなるか、部材を太くしてあちこち溶接して強度を増やすかが一般的な選択肢。
そのうえコストも大きく増大します。
ところが『WAVESspiral』は美しいデザインを保ちつつ、使いやすい広さのらせん階段を実現したことに価値がありました。
オリガミらせん階段『WAVES Spiral』

建築側の手間を削減する片持ち階段『DANDEL(ダンデル)』

片持ち階段『DANDEL』
同年、「”段”板が壁から”出る”階段」という意味の『DANDEL(ダンデル)』を発売。
片持ち階段の需要は多くはないものの、当時も今も一定の割合で求められ続けており、多くの設計者、施工管理者を悩ませてきました。
というのも、片持ちで強度を保つためには、根本となる部分に強固な下地が必要になります。
多くの場合は、そこにどれだけの強度が必要なのかギリギリのラインを検証する時間も予算もないため、オーバースペックな鉄骨の部材を壁に埋め込んだり、それと段板を溶接で一体化したりと、事前検討や現場管理が非常に手間で、コストも増大します。
『DANDEL』であれば、下地として105角の柱を敷き詰めることで済み、コストは微減程度であるものの、検討時間、工程管理手間の削減に貢献することができます。

ところが、105角の柱を敷き詰めることもハードルは依然として高いことに加え、強度上の理由から手すりを設置することは出来ず、高さ1m以内の階段としてしか使用できないという欠点があり、大きく売上を伸ばすには至りませんでした。

2017年

強度とデザイン性をUPさせた『DANDEL TYPE3』

片持ち階段『DANDEL TYPE3』
2012年頃から『ObjeA』の売上が急増したことで、ディテールに対して様々な要望が舞い込み、あらゆる改善を行うことでブラッシュアップする作業に開発リソースを注ぎ込んでいました。
また、同時期は『Athletic Series(アスレチックシリーズ)』『D-NA(ディーナ)』等のインテリア、エクステリア商品のラインナップ拡充も方針にあったことで、6年ぶりとなった階段の新商品が『DANDEL TYPE3』です。
最後に発売した片持ち階段『DANDEL』の新バリエーションで、本体形状のバリエーションでTYPE1、TYPE2がすでに存在していたため、TYPE3と名付けられました。

段板を支える本体がR形状になっており、構造としての合理性が向上。
壁固定用のビスが見えないことも含めてデザイン性をUPさせただけでなく、内部の見えない場所にブレースを仕込むことで強度もUPさせることができました。
その強度UPにより、手すりが設置可能になり、どんな高さの階段としても使用できるようになっています。

製品紹介 詳細

『WAVES』の意匠上の欠点を解消した『WAVES DANDEL(ウェーブスダンデル)』

片持ち階段『WAVESDANDEL』
同年、『WAVES』の片持ち階段バージョン『WAVES DANDEL(ウェーブスダンデル)』をリリース。
2009年に発売した『WAVES』には、ささら桁が裏面に見えてしまう欠点があったのですが、片持ち階段にすることで、ささら桁を排し、どこから見てもノイズがないプロポーションを作り上げました。
『DANDEL TYPE3』と同様、壁固定用のビスは露出しないような特殊な構造で設計されており、どうやって固定しているのかを一目で理解できる人はほとんどいません。

これら2つの片持ち階段は、TYPE1、2の手すりを設置できない欠点を克服し、「高さ1m以下」という制限を取り払った結果、低迷していた『DANDEL』の売上は若干上向くことになります。
とはいえ、「壁下地として柱を敷き詰めなくてはならない」という顧客にとっての負担を解消することはできておらず、それぞれ年に数件程度しか採用に至りませんでした。
この経験を踏まえ、「後施工の片持ち階段の下地はどうあるべきか?」という問いを深めていき、2021年発売の『DANDEL ARMS(ダンデルアームズ)』では、下地の問題を大きく解決することに繋がります。

製品紹介 詳細

2018年

シンプルなデザインとの差別化『DEROUS(デラス)』

立体トラス階段『DEROUS』
今まで一貫して「シンプル」「モダン」なデザインで設計してきたカツデンにとって、新しい試みになったのは、立体トラス階段『DEROUS(デラス)』
この頃の人気テイストになったインダストリアル、ヴィンテージスタイルへの需要と、すでに廃止した『ObjeA モノ』のような竜骨階段への需要を叶える階段として開発をスタートしました。
異形丸鋼を立体トラス状に組み、ゴツゴツした質感と、溶接痕が無骨さを演出。
「シンプルなデザインは物足りない」と考える方の選択肢を広げることができ、ニッチな要望に応えられる商品として年間20〜30件ほどの注文を受ける商品になっていきます。
立体トラス階段『DEROUS』
『DEROUS』の開発に付随した影響として、ただの鋼板ではない異形丸鋼を扱ったことで、これ以降の開発で素材や加工方法に着目していきます。
デザインを広義で捉え、質感や色味という分野で開発を進めていくきっかけと言っても過言ではありません。
インダストリアル トラス 階段
『DEROUS』の発売に至るまでの開発秘話

2019年

初の非住宅用の高強度階段『ObjeA PREMIUM(オブジェアプレミアム)』

非住宅用階段『ObjeA PREMIUM』
階段事業開始から、カツデンは一般住宅用の階段を開発してきましたが、「同じデザインで”非住宅の共用階段”を製作して欲しい」という相談が年に数回ほど寄せられていました。
というのも、一般住宅用の階段である『ObjeA』は、用途や人数を限定した仕様にすることでコストを抑えていて、それをそのまま非住宅の共用部で使うには不特定多数が利用できることを想定した強度に設計し直す必要があります。
具体的には、ビスやボルトの耐久性、同時に何人もが乗ったときの荷重、非住宅で発生し得る5m超の階段長さによる揺れの増大などを考慮した設計に作り直さなくてはいけません。

一般住宅用の階段としては『1日に4人家族がそれぞれ5回昇降すると仮定し、20年利用しても問題ないような強度基準』を設け、15万回の強度試験を課していました。
一方で今回の非住宅用階段では、4人家族が1日3回を20年間利用、それが10世帯あると仮定し、100 万回を強度試験クリアの基準としました。
非住宅用階段『ObjeA PREMIUM』
約2年かけて出来上がったのが、非住宅用として十分な強度を持ちながらも、一般住宅用と遜色ないプロポーション、ディテールのデザインを満たした階段『ObjeA PREMIUM(オブジェアプレミアム)』です。
非住宅に設置されている階段は、現場溶接、現場塗装が発生する場合が多いことに加え、設置に数日〜1週間程度を要します。
『ObjeA PREMIUM』は、工場で美しい仕上げ状態で生産されること、ノックダウン方式で施工が最短1日で完了することにより、そのデザイン性はもちろん、現場における手間を大きく解決する商品として、今では年間50〜60件ほどのマンション、店舗、オフィスなどに納入されています。
また一般住宅用に、「側面の壁に固定が不要かつ緩勾配でも揺れづらい階段」としても利用できるため、設計者やお施主様にとって選択肢がさらに広がる製品です。
ObjeA PREMIUM(オブジェアプレミアム) 開発秘話
『ObjeA PREMIUM』の発売に至るまでの開発秘話

製品紹介 詳細

2021年

軽下地で設置できる、圧倒的に導入しやすい片持ち階段『DANDEL ARMS(ダンデルアームズ)』

片持ち階段『DANDEL ARMS』
今までカツデンが発売してきた片持ち階段は、「後施工可能」というメリットを提供できたものの、プランニングの手間、建築工事の手間、建築コストのUPという3つのハードルが残り、設置を断念されるケースが半分以上にのぼりました。
カツデン社内で「片持ち階段は売れない」というムードが漂っていた中で、転機が訪れます。
それが、片持ち階段『DANDEL ARMS(ダンデルアームズ)』の発売。
片持ち階段『DANDEL ARMS』
名前の由来になっている斜めの腕がわずかにたわみながら段板を支えることで、壁側に強固な下地が不要になったのです。
合板24mmを下地として補強し、表面には硬質石膏ボードを取り付けるだけで片持ち階段としての強度を十分に保つことができます。

圧倒的な設置しやすさによって、カツデンが発売してきた片持ち階段のデメリットを解消し、年に数件だった出荷数は約10倍へと大きく伸ばすことに繋がりました。
片持ち階段自体の需要は依然として多くないものの、施主様の要望とコストのバランスを踏まえたときの選択肢として重宝がられる商品に進化したのです。

『DANDEL』の発売に至るまでの開発秘話

製品紹介 詳細

2024年

シースルーデザインと逆行する存在感のある階段『Gradea』

箱段板階段『Gradea』
2000年代では高価格帯の住宅において「開放感」「シースルー」といったキーワードが聞こえてきましたが、2020年ごろから徐々に「重厚感」「存在感」といったキーワードが出てきました。
ラグジュアリーさを求めて段板を強調したデザインを要望されることが増え、特注ゆえに500万円を超える定価にもかかわらず数十件の依頼があったのです。
その依頼を主となって請けていたカツデンの営業が「規格化してコストダウンし、採用率を上げたいから、ぜひこれを商品化したい」という話を商品開発部に持ち込んだことでプロジェクトがスタート。
約2年の歳月をかけて、強度、品質、コストを安定させて発売すると、瞬く間に注文が殺到しました。
今では年間100〜120件ほどを出荷しており、『ObjeA』に次ぐ人気商品になっています。

『Gradea(グラディア)』が要望される理由は以下のとおりと推測しています。
箱段板階段『Gradea』
①大空間においても見劣りしないボリューム感があること
予算や土地に余裕のあるハイクラス層は、個室ではなくリビングや玄関を広く確保する傾向があります。
そんな時、大空間リビングに通常の階段を設置すると、どうしても見劣りをしてしまいます。
『Gradea』なら、段板を厚く見せることで、ダイナミックさと高級感を演出し、ラグジュアリーな空間を実現することが可能です。
箱段板階段『Gradea』
②家具のような美しい仕上げと段板が浮いているかのようなフロートデザイン
段板には、家具やフローリングに用いられるオークやウォルナットの突板から人気の4色を採用し、美しい仕上げとなっています。
また、階段の構造部であるスチール製のささら桁は非常に薄いため、その上に乗せられた厚い段板が対比効果を生み出し、重力に逆らっているかのような幻想的な景観を作り出します。
結果的に隙間が小さくなるデザインも、ペットやお子様のいるご家庭にはうれしいポイントです。
箱段板階段『Gradea』
③他の階段にはない、新しさと存在感を感じさせること
カツデンが最初にシースルー階段『ObjeA』を発売してから20年が経過し、『ObjeA』を含む様々なメーカーのシースルー階段の需要は高まり続け、今や多くの住宅展示場に設置され、Instagram などでもおしゃれな家を探せば、高確率で見つけられます。
一般住宅への普及率はまだまだ10%にも満たないシースルー階段ですが、こういった現状に対して、「シースルー階段はコモディティ化(一般化)している」と感じる方もいることでしょう。
そう感じる方々にとって、思わず人を招きたくなるような、他に類を見ない新しい階段として、『Gradea』は1つの選択肢となり得えます。

ここまで、『Gradea』が選ばれる説明をしてきましたが、では「開放感のある住宅は消えていくのか?」と考えるとそうではありません。
コモディティ化し始めているとはいえ、それが浸透しきって、飽きられ、消えていくまでには数十年〜数百年単位の時間がかかります。
逆に言うと、シースルー階段が世に出始めてから未だ20年”しか”経っておらず、未だ10%”しか”普及していないのです。(※)
住宅の中で体積が大きい設備を選択する際には、窓、キッチン、家具、カーテンなど、階段以外にも様々な他の要素と掛け合わせて考えていく必要があります。
これからも様々なトレンドが生まれていきながらも、「開放感のある空間」という人間の根源的な欲求に訴えるような要素は、消えにくいのではないかと推察します。
※カツデン以外の素材を問わず「シースルー階段」全体の市場として10%と表現しています(明確なエビデンスはありませんが・・・)

製品紹介 詳細

まとめ

カツデンは、「美しく快適な空間づくり」という企業理念を実現するために、ノックダウン式階段のリーディングカンパニーとしてデザインと施工性を両立させた階段を開発・製造してきました。
今まで数多くの商品があり、消えていったものもあれば、少ししか売れないままの商品もまた多くあります。
ただシンプルなデザインだけでなく、一部の強烈なニーズに向け、尖ったデザイン、施工性の向上、住宅メーカーの手間削減に貢献できる階段を次々に開発し、発売してきました。
それゆえ、「少ないニーズかもしれないけど、その人たちが喜んでくれるなら」という思いと、「商品として残し続けると、管理や在庫のコストが・・・」という思いが両面で存在することになります。
今回紹介した商品たちに対して、
「こんなことを考えて設計されていたのか!それはメリットがあるな!」
と感じてくれる方が少しでも増えてくれたら、筆をとったかいがあります。

我々が手掛ける商品のほとんどはマーケットインで開発されています。
お客様からの要望を形にすることで、毎年の商品が生まれているので、今後も意見や要望を寄せていただいて、お悩み解決手段としてのカツデン商品を提供していきたいと考えています。

PAGETOP